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外野の声には今もなお向き合っている。「米国や英国ではうまくいかないといわれているが、そうじゃないでしょうと思ってやっている。そこに人生を懸けている」

山田氏が米国から戻って「起業家」となってから10年あまり。「起業家は自分だけしか知らない真実を証明する必要がある」。こうした姿勢を貫いてきたという。一見クールな山田氏の内に秘められた熱い思いがこぼれ落ちた一瞬だった。

自分しか知らない真実を証明するのが起業家

会場からは活発に質問が飛んだ

会場からは活発に質問が飛んだ

批判にさらされても試行錯誤を続けるのは「諦めなければ絶対に成功する」と思っているからだ。最初の起業では会社の売却によるエグジットを経験し、メルカリはIPOにこぎ着けた。こうした経験は成功に違いないが、「世界で使われるインターネットサービスを創るという目標は達成できていない」。これが「打席に立ち続ける」ことの大きな理由だ。

「世界で使われる」というのは山田氏に限らず、この分野にかかわる日本の多くの企業、人たちの悲願でもある。すでに米国に進出し、米フェイスブックの元幹部などを経営陣に招き入れたメルカリは挑戦権を手にした一社といえるが、成功が約束されているわけではない。既存企業に加え、新規参入も後を絶たない。

講演の最中、こんな場面があった。山田氏が以前ヒットさせた携帯電話向けゲームの名前を挙げて学生に知っているかと問いかけると、ほとんどが知らなかったのだ。「当時、500万~600万のユーザーがいたのに……。驚きです」。メルカリについて聞くと多くの手が挙がったのとは対照的な景色だった。

このゲームがヒットしたのはわずか10年ほど前のことだ。にもかかわらず知名度が皆無というのは、変化のスピードが速いからにほかならない。かつての山田氏たちがそうだったように、起業家の話に耳を傾ける学生のなかからいつ次世代の旗手が出てきてもおかしくない状況だ。挑戦者として、そして追われる立場としてメルカリの新たな一年が始まる。

(編集委員 奥平和行)

メルカリ 希代のスタートアップ、野心と焦りと挑戦の5年間

著者 : 奥平 和行
出版 : 日経BP社
価格 : 1,712円 (税込み)

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