年収半分でも「CxO」に転職 肩書だけじゃない魅力

野村証券からスタートアップのスタディストに転職した山下公平さん
「チーフ○○オフィサーを希望」――転職が中高年にも広がる中、いきなり最高財務責任者(CFO)や最高技術責任者(CTO)など、いわゆるCxOのポジションを希望して転職活動をするビジネスパーソンが増えている。早いうちにトップマネジメントの経験を積んでおきたい、自分が会社を動かしているという実感を味わいたいなど理由はさまざまだが、共通しているのは自ら積極的に売り込んでいる点だ。
幹部候補生の座を捨てスタートアップへ
山下公平さん(36)が、野村証券を辞めて電子マニュアル作成支援のスタディスト(東京・千代田)にCFOとして転職したのは、2016年12月。翌年、取締役に就任し、現在の肩書は取締役CFOだ。
東京大学大学院を出て新卒で野村に入った山下さんは、野村時代は主に投資銀行部門でM&A(合併・買収)のアドバイザリー業務を担当。途中、会社派遣で米マサチューセッツ工科大学のビジネススクールに留学するなど、幹部候補生だった。しかし、留学中、タンザニアで友人のスタートアップを手伝った時に味わった高揚感が忘れられず、将来、経営者になることを念頭にベンチャー企業への転職を決意。管理部門専門の人材紹介サービス会社に登録し、スタディストに転職した。
年収は野村時代の半分になったが、「今の仕事のほうが、自分でビジネスをやっているという感覚があり、圧倒的に面白い」と語る山下さん。「今の給料の4倍出すと言われても、もう前の会社には戻れない」と話すほど、充実した日々を過ごす。
人材サービス大手のエン・ジャパンが運営する転職サイト「ミドルの転職」を通じたCxOの求人件数はここ数年、右肩上がりだ。17年のCFOの求人件数は14年と比べて約2.5倍、CTOまたは最高情報責任者(CIO)は同約2倍に増えている。同社が18年2月に転職コンサルタントに実施したアンケート調査でも、回答者の31%が「CxO求人が増加している」と答え、54%が「今後も増える」と予想している。
CxO転職が増えている第一の要因は、このところの起業ブームだ。ベンチャー企業の創業者兼最高経営責任者(CEO)が、経営を軌道に乗せるため、自分の右腕となる最高執行責任者(COO)やCFOを探すケースが増えているという。