博報堂がしかける未来の事業 広告現場の言葉で考える
リブロ汐留シオサイト店
価値創造は企業と生活者のかかわり合いから
「未来の生活者が何を良いと思うのか」から始まったプロジェクトが、最終的に「私たちが未来をどうしたいのか?」という話になった、といった当事者の実感のこもった発言がちりばめられ、それが実際イノベーションの現場で悩む読者のヒントになる。そこが本書の読みどころだ。
もう一つ重要なキーワードは「共創」だ。「価値は企業と生活者のかかわり合いの中から生まれる」と吉澤氏は言い、そんな相互的なかかわりが収録された事例それぞれに見いだすことができるのだ。
「なりたい未来」を考えるところから始めて「機会発見」「事業アイデア創出」「事業化」「実行」「持続的成長」と、イノベーションのプロセスを追いかけるように27の事例が配されている。読者は自らが悩んでいる段階に応じてページを繰ってみてもいいだろう。
汐留にはライバル会社ともいえる電通が本社を構え、広告や企画、イノベーションへの関心の高い読者が多い。「年末年始を通じて、この本はよく動いている」と店長の三浦健さんは話す。
前田裕二『メモの魔力』が1位
それでは、先週のベスト5を見ておこう。
1位は、年末に「書店員おすすめ 年末年始に読むべきビジネス書9冊」の記事でも紹介した、ライブ動画配信ビジネスの起業家、前田裕二氏が「メモは生き方である」と語る本。2位には、経営学修士(MBA)の知見を使いやすくまとめた本が入った。3位は、精神科医が仕事でのアウトプットの仕方をわかりやすく解説したビジネススキル本だ。4位に今回紹介した本。5位には、移動手段をサービスとして使うことに向けた幅広い業界での動きを読み解いた1冊が入った。
(水柿武志)