長男の「辞めない覚悟」が禅譲の決め手 カプコン会長
カプコンの辻本憲三会長兼CEO(下)
「海外売上高比率が54%に達し、ソフトのネット配信が増える中で、24時間体制で会社を運営する必要が出てきています。社内結婚した夫婦が時間をずらして出社できるような仕組みができたらいい。企業としてしっかり人が働き続けられるような責任を果たさないといけません。この年になったからこそ感じることかもしれませんが」
ワインとゲームは一番でないと売れない

大阪に本社を置き続ける理由のひとつは、社員の住環境という
「東京や海外に行くことが多いので、現場の社員と直接話す機会は減っています。それでも2カ月に1度は、誕生日を迎えた本社の全社員を呼んでパーティーを開きます。社員の顔を見て仲間意識をつくるための良い機会になっています」
――大阪に本社を置き続ける理由はありますか。
「東京では大阪ほど本社近くに住みやすい環境を用意できません。それにダウンロードでのソフト販売が増えていますから、大阪から直接海外にも売れますし、開発陣は大阪に集約させた方が効率的です」
――10年からは個人の会社でワインビジネスも手掛けています。ゲーム事業との関連はありますか。
「ワインとゲームの共通点は、どちらも人生に不可欠なものではない、ということです。だからこそ一番の品質でないと売れない。これも同じです。ワインは300年、400年のブランドもあり、普通にやっていては10年くらいのブランドが勝てるわけありません」
「ゲーム事業と同様、とにかく数字を大事にしています。米カリフォルニア州の有名な産地ナパバレーにある畑の敷地は東京都の中野区と同じくらいで、高低差もあるので天候も場所ごとに異なります。生育状況などのデータを集めた50枚くらいの紙に目を通して、低い土地で作った苗を高いところに持っていくタイミングなどを指示しています」
「日本では全国各地の約2000の高級飲食店に置いてもらっています。特に高級ワインでは珍しいハーフボトルが人気です。財界のメンバーにも好評で、『ワインを持ってきてくれ』といろんな会合に呼ばれます。様々な分野の人から政治や経済の話を聞けるので、世の中の流れを読むのに役立っていますね」
奈良県出身。釣り具工場で働きながら県立畝傍高校に通い、1960年に卒業。駄菓子屋の経営、パチンコ台やピンボールの貸し出しなどを経て、83年にカプコンを創業し社長。2007年に会長に就き、長男の春弘氏が社長を継いだ。
(上田志晃)