未来のジョブズ、AIで発掘 人材採用・育成の革新力
ビジッツテクノロジーズの松本勝CEOに聞く
具体的には、まず学生側が「これまで何をし、これから何をしたいか。どう生きていきたいか」を記入。社会人の先輩は「自分はこんな仕事をやり遂げ、こう社会を変えたい」といったビジョンなどを掲げる。AIが双方の「共感」をベースにしてマッチングしていく仕組みだ。

ビジッツテクノロジーズのミーティングルームは、明るく開放的な雰囲気
登録した学生は12万人を突破し、OB・OGは約2万人を数えた。精密工学を専攻する東大院生(23)は「正直言ってまだ明確なキャリアをイメージできていません。今の学生は会社の給料や社会的な地位以上に、その仕事をやると面白いとか、社会に役立つとかに興味があり、共感しやすい。VISITS OBでは、自分の憧れの先輩のリアルな声を聞けたり、キャリアに役立つアドバイスをもらったりできる」と評価する。東大院生の4人に3人くらいが登録しているという。
そのアイデアは創造的か 「評価」をサービスに
ここで一定の成果を収めた松本氏は、17年10月に従来のAIの枠を超えた新たなサービスに踏み切った。「もっとAIを進化させて、イノベーティブな人材の発掘や育成につなげられないかと考えました。革新的な人材とは、創造性があり、目利き力のある人ですが、そういう能力は従来のAIではうまく測れませんでした。そこで独自のアルゴリズムを駆使して『アイデアグラム』を開発したのです」という。大げさに言えば、未来のスティーブ・ジョブズ(米アップル創業者)のような人材を発掘しようという試みだ。
アイデアグラムは、アイデアに順位をつけて評価する仕組みだ。参加者はまず、アイデアを生む創造力と、それを評価する目利き力を問う2種類のテストを受ける。提案した新規事業などのアイデアは、参加者相互の評価を通じて点数化され順位が決まっていく。オンラインで実施した試験のデータを独自のアルゴリズムで分析し、人材発掘や育成に活用する。
アイデアグラムを導入する大手企業も増えているという。ある総合商社のアイデアグラムに参加した東大院生は、「面白いテストです。5W1H方式で新規事業のアイデアを提案しましたが、30人程度の参加者の中で、点数は真ん中ぐらいでした。今のところ、商社マンか戦略コンサルタントになりたいと考えていますが、もっと独創的で、共感を呼ぶアイデアを考えないといけないですね」という。
「創造性を可視化し、イノベーティブな人材を発掘、育成することは可能です。今後も科学の力で新しいサービスを次々開発したい」と語る松本氏。ビジッツの開発したサービスに優秀な学生が群がり、企業も次々引き寄せられており、松本氏はいまやイノベーションテックの旗手とも言える存在だ。ビジッツのサービスを起点に「未来のジョブズ」が見いだされるかもしれない。
(代慶達也)