お笑いコンビの盛衰に学ぶ 理想の組織のつくり方
人材研修コンサルタント 中北朋宏氏
では、お笑い芸人の場合はどんな経路をたどるのか。多くのコンビにありがちなのが、結成してすぐに上下関係が生まれるケースです。それは「ネタを書く人」「ネタを書かない人」の違いです。
コンビの組み始めで上下関係ができ上がる
ネタを書く人は、ネタを生み出すという作業に頭を悩ませ、多くの時間を割かざるを得ません。ここで片方が何もしない場合、コンビの間に亀裂が入ります。ティール組織でいうと、「オオカミの群れ」と「軍隊」を行ったり来たりする段階です。
私たちの場合が、まさにそうでした。私がネタを考え、トップダウンの軍隊的な仕切り役になってしまい、他の2人は思考停止に陥り、言われたことしかしなくなってしまいました。自律性が欠如したといえます。
相方のアイデアに対して感覚的に「面白くない」と発言し、承認するという作業を怠っていたことも、大きなダメ要因だったと思います。
企業でも同じことが起きがちですよね。会議の中で上司が部下の意見を否定したり、押さえつけたりする。そういうことを繰り返していると、その組織では前向きな意見が出なくなり、生産性が著しく低下してしまいます。
ただ、コンビの場合は「ネタを書く人」の能力が高いと、売れていきます。テレビやラジオなどに出演することが増えます。そうすると何が起きるか。ネタを書く人が、ネタを書かない相方に対して科学マネジメントを始めます。すなわち、キャラクターを設定し、セリフや見た目を指示通りに実行させる。これは「機械」の段階ですね。
しかし、この段階にとどまっていると、同じネタで露出が増えるだけで、やがて飽きられます。いわゆる「一発屋」と呼ばれる芸人の方がこの状態といえます。機械的にキャラクターを決めて立ち振る舞うだけでなく、本来の自分の良さや能力をお互いに引き出し合う。多くのベテランの漫才コンビの方々が売れ続けるのは、そうした「家族」の状態に達しているからではないかと思われます。
家族的なコンビのあり方は、時代の流れでもあると私は考えています。かつての漫才コンビはキャラクターを機械的に設定し、どちらかといえば、どつき合ったり、いがみ合ったりすることで笑いをとることが多かった。