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「業界・ビジネスモデル・企業ステージ」による社風の違い

技術系企業出身のSさんが転職先として選んだのは、老舗大手メーカーのA社でした。成熟した業界にあり自社のポジションも固定されているA社が新規事業を展開することになり、その要素技術の専門性と経験を持つSさんに白羽の矢が立ったのです。Sさんは経験から、機動性の高いアジャイル型でビジネスを展開し、スピード勝負の市場参入になることが分かっていましたので、着任早々に当該事業での行動を開始しました。

経営の意思決定のスピードが事業の成否を左右することも。写真はイメージ=PIXTA

経営の意思決定のスピードが事業の成否を左右することも。写真はイメージ=PIXTA

ところがA社では、手続き・稟議(りんぎ)・承認のプロセスが非常に重んじられており、ちょっとしたことでも事業部の会議や経営会議での承認を得なければなりません。Sさんが、前職なら個別承認ですぐに進めていたような案件でも、「では、それは再来週の事業部本部会にかけてください」と言われてしまいます。

「これでは競合に負ける」――。上長や経営会議に具申しましたが、A社のプロセスが変わることはなく、Sさんは1年ほどの奮闘の後に、他社への移籍を決めました。

デジタル関連のビジネスを展開する企業であれば、どんどん上書き更新される技術をキャッチアップし、可能ならそれを先取りして新しいサービスを顧客に提供することで事業の成功を導く必要があります。新規事業を展開するベンチャー企業も同様です。

一方、安心安全が第一の社会インフラビジネス、医療福祉や教育、食などに関連するビジネスでは、まずリスクを低減させ、均一に品質を保った商品や事故のないサービスを提供する必要があります。何重にもわたる事前の検証や、生産・サービス提供においてもミスを許さない業務オペレーションが求められるのです。こうした業界特性や事業の位置付けからも、企業風土はつくられます。

新たな市場を開拓していく必要がある企業と、レガシーな市場をしっかり守り深耕していくべき企業とでは、おのずと社風も異なり、フィットする人物タイプも変わってきます。昨今はどの企業も、この攻めと守りを同時並行で進める必要があり、「知の探索」(知識の範囲を広げる)と「知の深化」(すでに持っている知識の改良)の「両利きの経営」が求められるなどともいわれます。

しかし、理論は理解できても、実際問題として、ひとつの会社の中で両立させることは非常に難しいでしょう。なぜかといえば、まさに相反する社風を同じ企業内に成り立たせなければいけないからです。

「業界・ビジネスモデル・企業ステージ」で社風の違いを確認するフレームを紹介しておきます。応募先企業の事業環境、ビジネスモデルや企業ステージがどれに該当するか、ぜひチェックしてみてください。

米ミシガン大学のキム・キャメロン教授とロバート・クイン教授「組織文化を変える」より
(1)家族文化(組織内部の維持重視)=人々が多くのものを共有するフレンドリーな職場
(2)イノベーション文化(組織外部のポジショニング重視)=起業家精神あふれるクリエイティブな職場
(3)マーケット文化(組織外部のポジショニング重視×安定性・統制重視)=市場の秩序や動静に対応しようとする職場
(4)官僚文化(組織内部の維持重視×安定性・統制重視)=身内の序列や力関係が最重視される職場
の4つの企業文化に分類

「地域(国内外)」による社風の違い

30歳を過ぎた頃、某大手システム会社で、東京と大阪の2本社それぞれと契約取引をした際のことです。東京側で決裁されたものと同じ内容を大阪側でも導入いただくことになり、契約に出向いて提案と見積もりを出したところ、担当の人事部長に「井上くんなぁ、あかんな、これは」と言われました。

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