とらわれず変われ 中川政七商店、14代目は中途入社
中川政七商店(下)

中川政七商店の千石あや社長
「中川政七商店」や「遊中川」などのブランドで、工芸や暮らしの道具の企画・製造と販売を手がける中川政七商店(奈良市)。1716年の創業以来、創業家の中川家が社長を務めてきたが、2018年3月、まだ43歳だった13代中川政七社長が退任し、中川家とは無縁の社員が14代社長に就任した。千石あやさん。中途採用で入社した老舗は驚きにあふれていたという。(前回の記事は「職人をコンサル、日本の工芸を元気に 中川政七商店」)
良い企業文化はトップダウンで培えない
――13代社長から次の社長に就任を打診された時、思わず笑ってしまったとか。
「それ本当なんです。社長、何を考えてるんだ?と思うくらい驚いて」

一つひとつの商品にデザイナーの思いを込める=中川政七商店提供
「前社長の秘書も務めたことがあるので、次の社長は中川家以外から出したいという話は聞いていましたが、まさか自分とは思っていませんでした。何しろ先代もまだ若かったし、私も中途採用で入社した41歳。3カ月くらい断り続けたんですが、『千石さんがダメなら第二候補というわけにはいかないんだよ』と言われ、腹をくくりました」
「前社長には『良い会社は、良いビジョンと良い企業文化だ』と言われました。『ウチには"日本の工芸を元気にする!"というビジョンがある。一方で、良い企業文化は、トップダウンでは絶対に培えない。企業文化はそこで働く人がつくっていくものだから』と。だから、できるだけ早い時期に社長をバトンタッチする必要がある、と。これは納得しました」
「13代の中川政七は強いリーダーシップで会社を大きく変えてきました。彼は経営者としてピカイチだと私は思っていますが、それでも社員数が500人近くという大所帯に成長した会社の全てを見ることには限界がありました。これまで一人で背負って決めてくれていたことを、これからは私たちが担っていく。そんな気持ちで引き受けています。私が社長になって約1年ですが、マネジメント層をはじめ、社員の結束力は相当強くなりました。こうして良い企業文化をつくっていけたらいいなと思っています」