変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

「自分を売り込む」のをためらうな 個性に合うやり方を

たとえば、「自分の実績をきちんと言わない」女性が多く、それが組織での昇進を難しくしていると著者は述べます。「良い仕事は分かってもらえると信じている」のに加え、「自分を売り込むことは恥」と思っているのが原因だといいます。

 あなたは、自分を売り込む恥知らずか、せっせと働き自分を表に出さない殉教者のいずれかの道しかないと思っている。とんでもない。その両極端の間には、多くの道がある。(中略)
 「引っ込み思案の人」と「けたたましく自分を売り込む人」の中間で、自分にぴったりくるものを探そう。
(PART2・第5章 悪癖その1 自分の実績をきちんと言わない 114ページ)

自分の功績をきちんと表現しなければ、昇進させたい人、大きな仕事をまかせたい人の「候補者名簿」に載るのは難しくなります。能力をアピールし、昇進の準備ができているというサインを送り続けないと「キャリアをすすめる間、損をすると思っていい」と著者は強調します。

会議でのばかげた発言 後悔するのは…

女性と男性の振るまい方の違いは、育てられ方に起因している面もあると著者は分析します。たとえば、「女の子は従順でお勉強ができると褒められるが、男の子はもっと自由が与えられる」と指摘し、「このような態度は男女平等をうたう家族や学校の間でもよく見られることだ」と述べます。こうした背景から、たとえば重要な会議の場での振るまい方に次のような違いがでるというのです。

 「(略)男性はしっかり考え抜いていない発言、ばかげた発言をするのを何とも思わない。だが、女性は何かばかげたことを言うと、狼狽(ろうばい)し、恥ずかしいとすら感じ、なかなか忘れられない。こんなことにならないよう、これからは口を閉じていようと決意する」
(PART2・第11章 悪癖その7 完璧主義の罠に陥る 199ページ)

人の性質は様々です。「女性だから……」「男性だから……」という決めつけは、時代遅れですし、本書もそういう立場ではありません。ただ、多くの女性へのコーチング経験から拾い出された、伸び悩む女性に共通する思考や行動のパターンには、「なるほど」とうなずかされる強い説得力があります。本書で女性に多い悪癖とされた傾向が「自分にもぴったり当てはまる」と思う男性も多いでしょう。男女を問わず、生き生きと活躍したいと考える人の背中を押す一冊です。

(雨宮百子)

◆編集者からひとこと 金東洋

働く女性から「男性上司の助言がまったく響かないし、役に立たない」という声を聞くことがあります。その原因は、男性と女性の考え方や仕事の進め方の違いを意識せず、みんなに同じアドバイスをする上司にあるのかもしれません。

「どんなに優れていようと、どんなに高い評価を得ていようと、女性は足りない点に焦点を合わせる傾向がある」「成功を収めた女性は、他人ではなく自分自身を批判する傾向がある」という本書の指摘は、私には新鮮な驚きでした。

世の中を見渡すと、マネジャー層、経営層の多くは男性です。この結果、キャリアップや昇進に関する情報は男性目線になりがちで、女性向けの情報は限られているのが現状です。本書には、働くうえでの態度や心構えの面から、自分の「壁」を破るヒントが詰まっています。転職や就職活動の際の自己分析のツールとしても役に立つ一冊です。

 一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ日本経済新聞出版社の若手編集者が、同世代の20代リーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。掲載は原則、隔週土曜日です。

コーチングの神様が教える「できる女」の法則

著者 : サリー・ヘルゲセン、マーシャル・ゴールドスミス
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,944円 (税込み)

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