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自由な校風と並ぶもう一つの特徴が、二兎も三兎も追うのをよしとする教育方針だ。勉強だけでなく、スポーツや文化活動で突出した実績をあげる生徒も多い。たとえば、1月の「第20回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA」では2年生の堀田海斗さんが高校生部門で優勝。18年3月の全国高等学校ハンドボール選抜大会では女子がベスト8に入った。12年には当時3年生だった榊原春奈さんがボートの女子シングルスカルでロンドン五輪の日本代表に選ばれた。

理系文系関係なし リーダーは幅広い教養を

名古屋市東区にある旭丘高校の校舎

名古屋市東区にある旭丘高校の校舎

杉山氏は「受験勉強だけでなく、様々なことに興味や関心を持って打ち込めば、その経験が人としての幅を広げ、その後の人生に必ず生きてくる」と意義を強調する。こうした教育方針はカリキュラムにも反映されている。旭丘では、大学で文系に進む生徒も3年間で理系の教科・科目をすべて履修し、理系の生徒はその逆をする。多くの進学校が大学受験のために教科・科目を絞るなか、「きわめて珍しい」(杉山氏)という。

理系文系のクラス分けがないのも、立派なリーダーになるには様々な基礎教養を身につけるのが大切だという考えから。文科省は18年、文系・理系に偏った教育の弊害を指摘し、幅広い教養を身につけた若い人材の育成を目指すべきだとする報告書を公表したが、これを先取りしていた形だ。

もちろん大学受験を軽視しているわけではない。18年春の合格実績は、浪人生を含めて東大に25人、京大に37人が合格した。杉山氏は、東大40、京大40、国公立医学部40のトリプル40を目標に掲げながらも、「目的は一流の大学に入れることではなく、あくまで立派なリーダーとなって社会に貢献できる若者を育てること。そのためにも幅広い教養と経験が重要だ」(杉山氏)。

旭丘には1学年の定員が320人の普通科のほか、定員40人の美術科もある。これも進学校では非常に珍しい。愛知県内を見渡しても、美術科があるのは旭丘だけ。このため、画家や芸術家を目指す優秀な生徒が県内全域から集まってくる。

「旭丘の一番すごいところは、バイオリニストやピアニストの卵、ヨーヨーで世界2位になった生徒、スポーツで活躍している生徒などユニークな人材がたくさんいて、互いに切磋琢磨(せっさたくま)し合える環境があること。リーダーシップを身につけるには、こうした環境で高校生活を過ごすのが、とても重要ではないか」(杉山氏)。こうした環境からどんなリーダーが飛び出すのか、期待は高まるばかりだ。

(ライター 猪瀬聖)

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