生活と仕事、バランスより「統合」がスウェーデン流
クリスティン・エドマン著 『アップ・トゥ・ユー 「よくばりに生きる」ためのキャリア戦略』

スウェーデンでは税率が高いせいか、共働きが当たり前。H&Mの働き方もそんな状況を映しているようだ
ワークライフバランスという言葉はすっかり定着した。ただ、全員にひとつの正解があるわけではなく、自分なりのバランスを求めて手探りを続けている人も多いだろう。今回の書籍『アップ・トゥ・ユー 「よくばりに生きる」ためのキャリア戦略』は、ファストファッション大手のスウェーデン企業、ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)で働いた著者が、そこで身につけた「バランスさせるのでなく、インテグレート(統合)する」という働き方を紹介する。
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クリスティン・エドマン氏
著者のクリスティン・エドマン氏は1975年、日本人と米国人の両親の間に生まれ、東京で育ちました。97年から世界的な玩具会社などで働いた後、結婚を機にスウェーデンに移住しました。2005年にはストックホルム商科大学で経営学修士号(MBA)を取得。H&Mに入社した後、H&Mジャパン設立に携わり、16年まで代表取締役を務めました。
17年にはLVMHファッション・グループ・ジャパンの「ジバンシィジャパン」プレジデント兼最高経営責任者(CEO)に就任。2人の子を育てながら、フラットな組織づくりや人材育成に力を入れ、日本女性の社会進出を支援する活動にも取り組んでいます。
ワークとライフ、バランスはあり得ないと思っていたが…
朝は12歳と8歳の男の子2人の弁当を作って学校へ送り出す。夜は宿題をみたり、風呂に入れたり。家で仕事をすることもある――。忙しく、充実したCEO生活を送る著者ですが、20代のころは疑いもなく「将来は専業主婦になる」と思っていたそうです。
完璧主義の私にとって、ワークとライフのバランスを取るというのは、「どちらも中途半端」を意味していました。
(「ワーク・ライフ・インテグレーション」のすすめ 42ページ)
会議より「子どもの発表会」を優先した上司
そんな著者を変えたのは、スウェーデンのH&Mでの経験でした。たとえば、職場の先輩が仕事中に休暇旅行の航空券の手配を始めたり、上司が「子どものピアノの発表会があるから」と会議を早く切り上げるよう求めたりといったことが、たびたびあったそうです。著者は当初、公私をきっちり分けない人々に憤慨しましたが、それがスウェーデン流だと気づきます。