実力を問う「人づて転職」 ミスマッチなく高定着率
コスト削減に次ぐ利点として企業が挙げたのが、「ミスマッチのない採用ができる」で57%だった。間に立つ社員がいるおかげで、採用する側もされる側も、互いにある程度正しく理解したうえで決められる。入社後に双方が、「こんなはずではなかった」と失望するような事態を避けられるのだ。
採用にもかかわっている外資系IT企業の幹部は、「一般の採用面接では、企業も応募者も互いに自分を実際以上によく見せようとする。いわばキツネとタヌキの化かし合いだ。採用してみたら全然使えなかったという失敗例も少なくない。それに比べてコネ採用には安心感がある」と語る。
モンスター・ラボの永田氏は、定着率の高さを指摘する。その理由として、「社員紹介採用で入社した社員は、困ったことがあったら紹介してくれた社員に相談できる。それが大きい」と説明する。
最近は、フェイスブックやリンクトインなどの交流サイト(SNS)を通じた個人のネットワークが拡大しており、コネ転職が活発化する一因になっていると関係者は指摘する。こうした機運をとらえ、リファラル採用を支援するサービスも増えている。企業のニーズは高いものの、運用のノウハウに乏しいところが多いためだ。
リクルートキャリアは15年、リファラル採用を支援するサービス「グラバー・リファー」を立ち上げた。社員が自分の友人、知人を人事にスムーズに紹介できるようにしたり、煩雑な応募者の管理業務を効率化したりするツールを提供するほか、コンサルティング業務も手掛けている。モンスター・ラボも、このサービスを受ける企業の一つだ。現在約150社にのぼる契約企業の中には、日立製作所や武田薬品工業、サッポロビールなど大企業も多い。コネ転職は、ますます広がる気配だ。
(ライター 猪瀬聖)