イチローの「外国人体験」に学べ ミドル転職の成功法
ミドル世代専門転職コンサルタント 黒田真行

イチロー元選手は引退会見で米国での「外国人体験」を語った
グラウンドを去った米大リーグ、マリナーズのイチロー元選手の引退記者会見で語られた言葉には、転職活動に役立つヒントが隠されています。
移籍1年目にイチローが重ねた「見えない努力」
「アメリカに来て、外国人になったことで、人の心をおもんぱかったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れた」「孤独を感じて苦しんだことは多々ありましたが、その体験は未来の自分にとって大きな支えになると、いまは思います」。引退会見ではこういった言葉が語られました。
2001年、イチローを獲得したマリナーズは、結果的に年間116勝という記録を生み、プレーオフではア・リーグ優勝決定戦でヤンキースに敗れたものの、強烈なインパクトを残しました。242安打、打率3割5分、56盗塁で新人王とMVP(最優秀選手)を同時に受賞した選手となり、イチローの移籍に当初は懐疑的だった米国の野球ファンからも、移籍1年目にして圧倒的に認められる存在となりました。日本のプロ野球で評価されたスキルが、大リーグでも通用するかどうかというテーマを、結果によって証明し尽くしたわけです。しかし、その裏には、野球の技術的なこと以外での努力もありました。
移籍後のインタビューでイチローは以下のように語っています。「アメリカで成功するためには、英語を覚えることは必然だと思います。そしてできるだけ早く英語をマスターすることが自分にとっては大切なことだと考えています。でも、学校などで英語を習うことは考えていません。クラブハウスなどでチームメートと話すほうが、よっぽどためになると思うからです」(Mariners Magazine Vol.12. Issue 2)
外国人として、自分の伝えたいことを自由に伝えられないつらさ、通訳がいたとしても、百パーセント自分の思っていることは伝わらないもどかしさ、そのジレンマを越えて、チームに溶け込むために言葉の壁を乗り越えたことこそ、イチローのもうひとつの「見えない努力」だったのかもしれません。その努力の向こう側に「外国人になったことで、人の心をおもんぱかったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れた」という言葉が出てきたのではないでしょうか。