お客が1番、社員が2番 給料上げる経営とJ&Jの教え
カルビー元会長、RIZAPグループ取締役 松本晃氏
J&J時代から毎年3月末、全社員に金一封を手渡してきました。新入社員も社長も同じ額で、いわゆる大入り袋ですね。封筒には真っさらの新札が入っています。これで喜ばない人間はいません。財産が増えるというほどの額ではないですが、もらえば誰でもうれしい。銀行振り込みでは効果はありません。キャッシュ(現金)で払うのです。
「頑張れ」と言うのは給料上げてから
社員に「頑張ったら給料が上がるよ」と言っても、あまり頑張らないです。「給料を上げた。だから頑張れ」と言う方が、絶対に大きな効果があるんです。たくさん払えば、いい社員は頑張る。業績はよくなり、もっと払えるようになる。好循環が始まります。

「我が信条(Our Credo)」の内容や成り立ちを紹介するジョンソン・エンド・ジョンソンのサイト
今の日本経済の低迷にも同じことが言えるのではないでしょうか。90年代に東西冷戦が終結し、世の中が全く変わったのに日本の経営者は以前と同じことをやっている。うまくいくはずがない。政府は2%の賃上げをしろと言いますが、僕は3~5年の間、10%ずつ上げた方がいいと思う。そうすれば日本は変わりますよ。数年続ければ、経済はたちまち上向きます。
クレドの優先順位はよくできていると思います。お客さんが1番、その次は社員、その次はコミュニティー、最後が株主さん。そこまでちゃんと責任を果たせば、確実に自分に返ってくるんです。だから順番を間違ってはいけない。もちろん返ってくるというのは、お金だけではなく、満足感のようなことも含めてです。みんなから感謝されるというのが、経営者には大事なのです。
クレドは「世界で最も優れたビジネスドキュメント」といわれます。僕も死ぬまでその教えを手放す気はありません。いつも周囲に「あのまま使え」と言うんです。そこからモディファイ(修正)していけ、自分で変なものを作るな、とね。多くの会社が経営理念を定めるために経営コンサルタントに大金を払っています。それで世界中で称賛されているクレドよりいいものができますか? できないんだから、そのまま使えばいいんです。