受験は考える力と教養で 千葉高、ゼミで育む自主自律
千葉県立千葉高校の佐藤宰校長に聞く
では、なぜ付属中学をつくったのか。佐藤氏は、「今の子どもたちは考えるのが苦手で、指示がないと何もできないという危機意識が教育関係者の間にある。自発的に自分で考え、調べ、発表する力を持った子どもを育てるため」と話す。
考えるゼミ授業、中学生から

千葉高校の総合学習の発表会の様子=千葉高校提供
その目的を達成するため、千葉中では1年生からゼミ形式の授業を行っている。生徒は自分でテーマを見つけ、調べ、成果を発表する。3年生になると卒業論文にとりかかり、最後にみんなの前で発表する。17年度の「卒業論文発表会要旨集」をめくると、「紙の包装でごみ問題を軽減できるのか」といった硬派なテーマから、「10代からできるハゲ予防」「エビフライのしっぽは食べるもの?」といった柔らかいものまで、様々なテーマが並んでいた。
千葉中には、春休みを利用して米マサチューセッツ州に2週間短期滞在する「海外異文化学習」プログラムもある。ほとんどの生徒が参加するといい、「みんな大きな刺激を受けて帰国する」(佐藤氏)。
ゼミ形式の授業は高校にも引き継がれ、全員が卒業前に論文を作成する。発表会も開かれ、人文科学、社会科学、自然科学、スポーツ・芸術の各分野の最優秀論文に「千葉高ノーベル賞」が授与される。18年度は「人肉食という文化」「医療機関の利用についての空間分析―千葉県市川市を例にして―」「両利きになろう」「知られざる人間の演奏の秘密」の4作品が受賞した。
生徒の進路、「指導」より「見守り」
考える力の養成と教養主義――。ゼミ形式の授業はその象徴ともいえるが、ほかの授業にもその精神は及ぶ。たとえば、理科の授業は実験を重んじ、まず実験をしてから理論を教えるようにしているという。「卒業生から、大学に行っても実験に困らなかったという話をよく聞く」と佐藤氏は顔をほころばせる。また、週5時間ある英語の授業のうち、2時間は基礎英語から離れ、大学の教養課程で学ぶレベルの英語の文献を読む時間にあてている。定期テストも、ほとんどが論述だ。
こうしたカリキュラムは、大学受験にもプラスに働いているようだ。佐藤氏は、「最近は大学入試で暗記力より考える力がより重視される傾向にある。千葉高では昔から考える授業に重点を置いており、今までやってきたことを続けていけば、現在進行中の大学入試改革にも十分対応できると考えている」と自信を見せる。