受験は考える力と教養で 千葉高、ゼミで育む自主自律
千葉県立千葉高校の佐藤宰校長に聞く
18年の大学合格状況を見ると、東大には浪人生を含めて22人が合格。その2年前には32人の合格者を出している。国公立で一番多いのは地元の千葉大学で、18年は45人が合格した。

1927年に建てられ、今も現役の講堂
重厚な教養主義と並んで千葉高が掲げるもう一つの教育方針が「自主・自律」だ。この方針にのっとり、「受験勉強のやり方も大学選びも、各生徒にすべて任せている」(佐藤氏)。もちろん学校がまったく手を貸さないという意味ではない。たとえば、国公立大学2次試験の論述対策では、担当の先生に指導を受ける生徒が多いという。生徒が求めれば、全力で応えるというのが学校のスタンスだ。
「自主・自律」の精神、さらに強化
千葉高には、ほかの高校ではほとんど聞かないユニークな「伝統」がある。生徒会がないのだ。生徒の自主性を育む場である生徒会がないというのは、自主・自律と矛盾するようにも聞こえるが、これには事情がある。
もともと生徒会はあったのだが、1960年代に大学紛争が千葉高にも飛び火し、生徒が図書館に立てこもる事件が発生。警官隊が構内に投入される事態に発展し、その余波で生徒会は自主解散に追い込まれた。それ以来、約半世紀の間、生徒会のない状態が続いている。「話には聞いていたが、2年前に千葉高校に着任し、生徒会がない状況を直に見て驚いた」と佐藤氏は振り返る。
毎年開く体育祭や文化祭は、生徒たちが実行委員会を組織して運営に当たっている。生徒会を復活させようという動きは今まで何度かあったが、生徒自身が「生徒会がなくてもとりあえず大きな支障はない」と判断し、いずれも復活には至らなかったという。学校側も、「生徒会を復活させるかどうかは完全に生徒に任せている」(佐藤氏)。これも言ってみれば、自主・自律の尊重というわけだ。
佐藤氏の現在の関心は、「開校して10年が過ぎた千葉中学を、次の10年でどうさらに発展させるか」だという。佐藤氏は「これまでもゼミや卒論の作成などを通じて生徒の自主性を強化する取り組みをしてきたが、自主・自律の精神をさらに強化していきたい。それは時代の要請でもある。中学でそうした教育を受けた内進生が千葉高に進めば、外進生にとっても大きな刺激となり、より素晴らしい人材が千葉高から育っていくのではないか」と思いを語った。
(ライター 猪瀬聖)