多様な個性と渡り合え 同友会小林いずみ氏の恵泉時代
小林いずみ・経済同友会副代表幹事が語る(下)

小林いずみ・経済同友会副代表幹事
経済同友会の副代表幹事などを務める小林いずみ氏は、恵泉女学園高校(東京都世田谷区)で出会った教師の姿から多くを学んだ。同時に、個性的な同級生たちにも大きな刺激を受けたという。3年間の学校生活で「自然と身に付けた」多様な個性を尊重する姿勢は、外資系企業や国際機関でトップの役割を果たすのに役立ったと話す。(前回の記事は「リーダーの手本は恵泉女学園の教師 同友会の小林氏」)
先生方に負けず劣らず、同級生たちは個性的だった。
制服がなかったので、服装で自分を主張する子もいましたし、趣味もさまざま。入学したばかりなのに、皆それぞれ自分の意見を持っていて、ちゃんと議論になるのです。生徒同士だけでなく、先生にも言うべきことは言うみたいな感じで。後年、ある先生にお会いしたとき、「あなたたちの学年は大変だったのよ」と言われたほどです。
そんな同級生たちの中では、自分は普通の目立たない存在。「このままでは埋もれてしまう。自分の個性って何だろう」。知らず知らず、自問していたように思います。
日記をつけ始めたのも高校に入ってからです。今でもノートが残っていますが、「どんな人間になりたい」とか「自分を変えたい」とか、その頃に思い悩んでいたことが書かれていますね。毎日ではないですが、就職してしばらくたつ頃まで書いていました。
本を読むことも、自分探しの方法の一つだったかもしれません。電車通学の行き帰りが読書の時間になりました。庄司薫の「赤頭巾ちゃん気をつけて」とか、サリンジャーもよく読みました。「ライ麦畑でつかまえて」に始まり、「大工よ、屋根の梁を高く上げよ」などが好きでしたね。
強烈に印象に残っているのが、3年生の国語の教科書に載っていた高橋和巳の作品です。出典は忘れてしまったのですが、戦争と自己形成を深く考察した一文で、作家とはここまで覚悟を持って考え抜く仕事なのかと、愕然(がくぜん)としたことを覚えています。人間には皆、超えるべきハードルがあり、それを超えて初めて前に進める。生きていく上で必要な核の部分を形づくる、決定的な体験になりました。