最新型「上司4.0」とは 仕事以外に2つの「シゴト」
経営者JP社長 井上和幸
次のリーダーシップは「自己実現」が軸に
そして現在。ここのところ、クビキリ文化のイメージがある米国などでも、「やっぱりレイオフ(一時解雇)をするにしてもレイオフのされ方の問題があるだろう」「ちゃんと情報共有して、社員全体の信頼関係をつくろう」「社内顧客として社員を扱おう」といった意識が非常に強くなっています。
90年代になって変革者タイプの「リーダーシップ2.0」が登場しました。しかし、変革や結果に対する過剰な圧力などによって、組織はギスギスし、メンタル不調も増えました。その間、一部の富裕層と一般労働者の格差が広がり、トマ・ピケティ氏のような不平等論が話題沸騰となり、"1% vs 99%"を掲げたウォール街占拠デモのようなことも起きました。そこで、また昔のようなコミュニティーのあり方が注目されています。
米グーグルの研究などを見ると、彼らがあれほどの最先端テクノロジーを持った会社で徹底的に大量の人員とお金を投下して、「いったい、一番生産性が高いやり方はなにか」を解き明かしてみたら、何と、日本企業が昔やっていたようなことが一番良いというような結論に至っています。非常に興味深い研究成果です。

コミュニケーションを重んじ、主体性や自律性を引き出す新タイプのリーダーが登場してきた。写真はイメージ =PIXTA
そのような状況を含めて、今、世界においても、日本においても、望ましいリーダーシップスタイルとなっているのが、「リーダーシップ3.0」です。これは、リーダーが組織全体に働きかけ、ミッションやビジョンを共有し、コミュニティー意識を養う。同時に個人個人とも向き合い、オープンにコミュニケーションを取り、働きかけて、組織や個人の主体性、自律性を引き出すスタイルと定義付けられます。一般的には「サーバント・リーダーシップ」などと言われているものとほぼ同義です。
さらに我々はその先の予兆も感じています。「リーダーシップ4.0」です。
「リーダーシップ4.0」の定義は、今後、さらに明確化していくことになると思いますが、現時点で解説するならば、「自己実現」のようなものが軸となるリーダーシップととらえています。
マーケティングの父、フィリップ・コトラー氏は「マーケティング4.0(自己実現)」と言っており、組織論の大家であるピーター・センゲ氏も「ラーニング・オーガニゼ―ション(学習する組織)」を極めていくなかで、共著書『持続可能な未来へ』では、古(いにしえ)から学び、過去と未来の架け橋となり、両方を受け止めながらリーダーシップを発揮することとかなり精神性の話になってきています。
「リーダーシップ4.0」とは、全ての人がリーダーであるとも言い換えられます。自分自身に対してリーダーシップを発揮しないと、「今、この環境の中で、ただ言われたことだけをやるんですか?」という話になります。自分のやりたいことに対して、自分が能動的に関わっていく――。「WHAT(テーマ)」を設定して、それに向かってやっていく。
そもそも組織としても、言われたことしかやらない集団は、もはや機能しなくなっています。一人ひとりがリーダーシップを発揮することを、一人ひとりが意識しないといけない時代になっています。これが「リーダーシップ4.0」です。
このように「リーダーシップ3.0」「リーダーシップ4.0」をスタイルとして体現していくことが、今後の上司として良い歩みを実現するポイントになるでしょう。「リーダーシップ3.0」を体現する「上司3.0」、「リーダーシップ4.0」を体現する「上司4.0」の登場です。