「自分とは」突き詰めた慶応SFC マザーハウス山口氏
山口絵理子・マザーハウス代表兼チーフデザイナー(下)

山口絵理子・マザーハウス社長兼デザイナー
発展途上国で作ったバッグやアクセサリーを日本や台湾の店舗で販売するマザーハウス(東京・台東)の代表で、デザイナーも務める山口絵理子氏(37)。これまでにないブランドを立ち上げる過程で、自ら道を切り開いてきた。決して平たんではない道を進んでこられたのは、自由な校風の慶応大湘南藤沢キャンパス(SFC)で個性あふれる学生に囲まれ、自身について考え抜いた経験があったからだ。
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経済財政相などを歴任した竹中平蔵教授(現東洋大教授)のゼミで1年先輩だったのが、現在マザーハウス副社長を務める山崎大祐氏。ゴールドマン・サックス証券エコノミストだったが、創業2年目の2007年にマザーハウスに参加した。
山崎さんはゼミの中心人物でした。竹中先生とも重なるのですが「(人と違うという)外れ値」を許容してくれる人です。ほかの学生が日銀政策を研究している中、ひとりで途上国の教育問題に取り組む私と常に対話して「教育を何とかしたいという気持ち、夢を大事にした方がいいよ」と言ってくれ、自分の個性は現場(主義)にあると気づかせてくれました。
印象的だったのは、私は勉強でついていくのに必死で飲み会に一度も参加しなかったのですが、毎回必ず「行かないの?」と声をかけてくれたことです。自分は忘れられた存在で、いなくても変わらなかったと思う。そんな端っこにいる人にも配慮してくれて「リーダーってすごい」と思いました。
マザーハウスを起業した後のことですが、社内ミーティングなどでうまく説明ができず「山崎さんが社長をやった方がいいんじゃないか」と相談したことがあります。自分のような内向的な性格は組織を引っ張るのに向かないのでは、と。
その時に言われたのが「リーダーって、説明がうまいとかロジックが強いということじゃないんだよ」という言葉です。パッション、思いにみんな集まったわけで、うまくしゃべれるかなんて関係ない、と。リーダーはいろんなスキルがないといけないと思い込んでいたけれど、自分スタイルでいいんだ、と教えられました。
国際機関にあこがれを持ちつつ、民間企業の就職活動もした。
大学で開発学と出合って、国際協力の道に進みたいと思うようになりましたが、軸はやはり教育でした。小学校時代、周りと同じように行動するのになじめず辛かった原体験があるので、自由に生きられるような教育をする学校を途上国で作りたいと思いました。