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他人から時間を奪うな

忙しさから脱却しようとする際には「他人の時間を無駄にしていないか」を意識しようと著者は強調します。例えば、単なる連絡事項だけだったり目的が曖昧だったりする会議は無くしてしまっても問題ないでしょう。

無駄な拘束から人を開放することは、メンバーに利益と安楽をもたらします。仏教では、「慈悲」という考えが最重要視されています。「慈」は「友に与える」という意味で、「悲」は「同胞から不利益と苦を取り除こうとすること」です。

単に無駄な時間を削減するだけではなく、「遊びの時間」を確保することも重要です。一例として、アウトドア用品メーカーのパタゴニアで「サーフィンをすること」が社内のルールになっていることを紹介しています。平日でも、会社近くの海にいい波がきたら、社員はただちに仕事を切り上げて飛び込むようです。

 ただ、これには社員を鍛える面もある。サーフィンに行っても、仕事自体がなくなるわけではない。遊ぶ時間を確保するには、仕事を早めに終わらせることが不可欠だ。それによって責任感が養われるという。それに、仕事中に誰かが抜ければ、その穴を他のメンバーがカバーする場面もある。(中略)
 つまり、どんどん遊びに行くことにより、責任感と協調性という仕事上でもっとも大切なものが研ぎ澄まされていくわけだ。
(第2章 ビジネスにこそ「慈悲」を 78ページ)

「怒らないことによって怒りにうち勝て」「他人に従属しない独立自由を目指して、犀(さい)の角のようにただ独り歩め」「一切の形成されたものは無情である」――――本書では、ブッダの言葉をもとに、ビジネスでのストレスにどう向き合ったらよいかについて著者からの豊富なアドバイスが書かれています。自分のメンタルを鍛えるために読みたい1冊です。

(雨宮百子)

◆編集者からひとこと 桜井保幸

以前から仏教に関心がありました。私の生半可な理解では、仏教以外の宗教には「神」がいて、神を信じることが宗教に帰依すること。ところが、仏教の場合、開祖のブッダは存在しても、「神」はいません。仏教は宗教というよりも、哲学や世界観のようなものなのかなと考えていました。

2013年に齋藤先生に『リーダーシップとは言葉の力である』(17年に『すぐれたリーダーに学ぶ言葉の力』に改題、文庫化)を執筆いただいたとき、『ブッダのことば』(岩波文庫)をベースにした、「ブッダ論」を伺う機会があり、大いに感銘しました。ついては、齋藤先生流の仏教論をまとめたいと思い依頼、実現したのが本書です。

 一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ日本経済新聞出版社の若手編集者が、同世代の20代リーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。掲載は原則、隔週土曜日です。

齋藤孝の仏教入門 (日経ビジネス人文庫)

著者 : 齋藤 孝
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 864円 (税込み)

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