京大合格「3人に1人」の伝統 京都・洛星の全人教育
洛星中学・高校の阿南孝也校長
大学入試は1人で臨む「個人種目」だが、洛星生には「団体戦の雰囲気がある」と阿南氏は話す。6年間をともに励まし合い、かつ競い合う環境が「負けたくない」とがんばるムードを生み出すという。ただ、阿南氏は「大学はあくまで通過点。合格して終わりではもったいない」と述べ、大学の「先」をにらんだ自分軸づくりのサポートに心を砕く。
さまざまな形のグローバル体験も用意している。たとえば、中3の春には約2週間のオーストラリア語学研修の機会がある。ホームステイや授業参加に加え、地元生徒との交流を通して、文化の多様さを実感できるプログラムだ。高2では、米ハーバード大学の学生寮で暮らす機会もある。同大の学生チューターを交え、討論やプレゼンテーションに臨むという。
部・クラブ・同好会は50超す、学内行事も多彩に
洛星の母体は、カトリック教会の修道会として世界各地でミッションスクール(ヴィアトール学園)を運営する聖ヴィアトール修道会だ。洛星は、日本で唯一のヴィアトール学園として「心と頭と身体のバランスのとれた人間を育てる」という教育方針を掲げる。阿南氏は、目指す人間像を「人の痛みに気付ける人」と言い表す。

部・クラブ活動の連絡掲示板。活動の多様さがよく分かる
キリスト教に根差した全人教育の軸は、1952年に中学校を設立して以来、少しも揺らがない。宗教の授業はあるが、信仰を強いるわけではない。実際、寺社の子弟が入学するケースも珍しくなく、OBには臨済宗大本山妙心寺の副住職や神社の宮司を務める人もいるという。
全人教育の柱と位置づけるのが多彩な学内行事だ。とりわけ盛り上がるのが、毎年12月に開くキリスト降誕劇「クリスマス・タブロー」だ。中高を通して参加する伝統行事だけに「後輩を巻き込んで、成功を目指す経験はリーダーシップの面からも大きな糧になる」(阿南氏)。
高校2年までは部・クラブ活動への参加が必須だ。出入り口の壁には、各部・クラブの連絡掲示板がずらりと並ぶ。部・クラブの数は、同好会まで含めて50を超える。公式の部・クラブがない分野でも、5人集まれば自由に同好会を立ち上げられる。「生徒が活動実績を認めれば、部・クラブに昇格する仕組み。最近でもロボット研究部と料理研究部が昇格を果たした」(阿南氏)という。