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高度技術社会推進協会(TEPIA)が主催する「ロボットグランプリ」では、洛星はたびたび上位に入賞している。階段を自動で昇り降りする掃除ロボット「のぼルンバ」、校庭に白線を引くロボット「LINE MAKER(ラインメーカー)」はグランプリも受賞した。また、17年春の選抜高校野球大会では、わずか10人の野球部が「21世紀枠」の近畿地区代表候補に推薦された。文武両道を目指す姿勢が推薦理由だ。

京大志望、OBの身近さも一因

理系志向が強いのも洛星の特徴だろう。人数で見た比率は理系7に文系3で、医学部志望者も多い。阿南氏は「理系志望が増えたのは、しばらく前から続く長期的な傾向。世の中の役に立ちたいという意欲が強く、具体的に貢献できる医学を志す生徒が多い」とみる。医師を含むOBの生徒向け講演会なども企画し、多様な職業の選択肢を示している。

高校時代の失敗が「回復力」の強い人間をつくる

高校時代の失敗が「回復力」の強い人間をつくる

京大志望が多いのは、地元というだけでなく、部・クラブ活動で京大に進んだ先輩と触れ合う機会が多いのも一因だ。高校1年生で、洛星OBの教員や学生がキャンパスを案内する京大見学ツアーに参加できるのも大きいようだ。京大に進んだOBには、批評家の浅田彰、建築史家の井上章一、経済学者の猪木武徳、宝ホールディングス社長の木村睦の各氏がいる。

京都では進学校として一目置かれる洛星だが、阿南氏は生徒には、むしろ「価値ある失敗」を経験してほしいと考えている。高校時代の失敗の経験が、簡単にへこたれない「回復力」につながるからだ。「そろえられた部品を組み立てれば完成するという、プラモデル型の人生設計は危うい」と考える阿南氏は、生徒向け講演に招くOBにも、失敗から学んだ経験を語ってもらっているという。

洛星のOBには、ほかにもスポーツライターの玉木正之、元観光庁長官の溝畑宏、経済学者で静岡県知事の川勝平太、武者小路千家家元の千宗守、精神科医でミュージシャン(ザ・フォーク・クルセダーズ)の北山修、スカイマーク会長の佐山展生の各氏らがいる。阿南氏は「OB会の厚みと熱意は洛星にとってかけがえのない財産」と話す。

三井住友フィナンシャルグループ名誉顧問の奥正之氏もOBの一人。19年4月の日本経済新聞朝刊「私の履歴書」では、洛星での思い出をこうつづった。「知らぬ間に身についたこともある。反抗期の私は倫理の授業や宗教行事の説教は聞き流しがちだった。でも社会に出てから実感した。社会人として欠かせぬ倫理観を身につけるのは、若い時分でなければ間に合わないのではなかろうか」。奥氏は母校の教師には「洛星の教育方針に自信を持って」と呼びかけ、生徒には「京の星から世界の星へとはばたいて」とエールを送っていた。

完全中高一貫というつながりの深さ、キリスト教という不動の軸、歴代OBという無形の宝。これらの三位一体を強みに持つ洛星は、京都という地の利もあって、令和の新時代も次世代の担い手を送り出し続けそうだ。

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