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本書には実用的な事例が豊富に紹介されているが、本間氏はリアルな体験を重視してほしいという。たとえば「友だちの友だちに会う」という機会を増やせば、世界が広がる。旧知の友だちまでは使い慣れた物言いで済むが、その先の友だちになると新たな関係性が求められる。当然、言葉遣いを磨くチャンスにもなる。「書店の売り場でも、いつもとは違う棚に目をやるとか、普段は読まない女性誌を読むといったほんの少しのトライアルでアンテナを高くできる」と、本間氏は言葉の「中身磨き」にいそしむよう背中を押す。

「で?」と切り返す上司は嫌われる

同質性の高い職場では言葉に「甘え」が生じやすい。「分かってくれるはず」「うちの共通言語」という思い込みが働いて、時に雑な口調や荒い表現が飛び出す。たとえば、部下から説明を受けた後、上司がたった一言、「で?」と切り返すような場面もそうだ。「いろいろ説明してくれたけれど、それじゃ伝わらないよ」「もっと簡潔に言えないのか」「意味不明」といった、否定的なニュアンスを、威嚇するような物腰で表現したのがこの「で?」だ。

しかし、「で?」で保たれるのは、上司のプライドにすぎない。逆に、提案した部下は「せっかく丁寧に説明したのに、ちっともわかってくれない」「評価が低い」「失礼」などの不満を抱きやすくなる。結果的に部下は以後の提案を渋るようになり、上司への信頼感も薄れる。典型的な「敵をつくる言葉」だ。本間氏は「上司が部下の立場だった20年ぐらい前はこんな言い方もまだ通じたかもしれないが、今では全くアウト。職場の間柄は水平的になりつつある。偉そうな態度で自分を大きく見せようという判断がそもそも古い」と「威張りんぼ」の退場を促す。

「敵をつくるか、味方につけるか」の分かれ目は「一人ひとり異なる相手に関心を持ち、その人の価値観を理解しようと努力する」かどうかだと本間氏はみる。中途採用や転職が当たり前になり、年齢や言語、生活信条の異なる同僚が増えるなか、職場で発する言葉のスキルは一段と重みを増している。味方を得られないまでも、せめて無用に敵を増やさない言葉遣いは、働く者の「たしなみ」として身につけて損はないだろう。

本間正人
京都造形芸術大学副学長。NPO学習学協会代表理事、らーのろじー代表取締役。東京大学文学部社会学科卒、ミネソタ大学大学院修了(成人教育学 Ph.D.)。松下政経塾第3期。コーチングやポジティブ組織開発、ほめ言葉などの著書多数。

仕事で「敵をつくる言葉」「味方ができる言葉」ハンドブック

著者 : 本間正人
出版 : PHP研究所
価格 : 1,242円 (税込み)

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