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学校設立を準備するため、親世代や経済・産業界の人々の意見を聞いた小林氏は、日本の教育に強烈な不満を持つ人が多いのに驚いた。特に海外の人材と仕事をする人の間では「閉ざされた環境で、画一的な価値観を教え、日本でしか生きていけない子どもを育てようとしている」という危機感が目立ったという。

チェンジメーカーの資質、教育で磨ける

緑の中にたたずむUWC ISAKのキャンパス(長野県軽井沢町)

緑の中にたたずむUWC ISAKのキャンパス(長野県軽井沢町)

リーマン・ショックや東日本大震災の影響を受けながらも、4年かけて発起人に名を連ねる支援者を100人集め、学校設置認可にこぎつけたのは12年のことだ。発起人の3分の1は外資系企業の幹部、3分の1は起業家、残りはオーナー系企業の経営者だった。彼らが未来を担うとみるのは、既定路線を飛びだしてゼロからイチをつくり出す人材であり、世界を舞台に競い合い、変革を起こすチェンジメーカーだった。

チェンジメーカーにはどんな資質が必要なのだろう。小林氏は3つの力が重要だという。

「『問いを立てる力』『多様性を生かす力』『困難に挑む力』の3つが大切です。変革の一歩は、自分が取り組む新しい課題を見つけることから始まります。しかも、単に社会に必要だからではなく、自らが真に情熱を傾けられる内発的な問いに端を発していることが重要です。また、世界がますますボーダーレス化するなかで、多様な価値観を持つ人たちを理解し、協働できる能力も欠かせません。変革は困難の連続なので、壁に突き当たってもすぐ投げ出さず、失敗しても挑戦し直す粘り強さも必要です」

こうした力は、生まれつきの資質というわけではなく、「すべて教育で磨けるスキルだ」と小林氏は強調する。実際、UWC ISAKでは理論と実践の両面から、この3つの力を徹底的に鍛える授業を行っているという。

(2)変革の道は「ワクワク発見」から 問いを立てる力とは >>

小林りん
 学校法人ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事。都内の高校からカナダのUWCに編入。1998年に東京大学経済学部を卒業した後、国際協力銀行などを経て2005年にスタンフォード大学大学院で国際教育政策学の修士課程を修了した。国連児童基金(ユニセフ)のプログラムオフィサーとしてフィリピンでストリートチルドレンの教育問題にかかわり、14年に現在の学校の前身であるインターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)を設立。UWCの加盟承認を受け、17年8月に現在の校名になった。

(ライター 渡部典子)

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