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ただ、取締役を全員社外にすると、会社のことをよく知る人がいなくなってしまいます。だから1人か2人は社内から出してもいいんです。カルビーに入ったとき、僕はスナックのことはまったくわからなかったので、伊藤秀二社長にも取締役になってもらいました。結局、社内の取締役は9人から2人に減らし、社外取締役を2人から5人に増やしました。

社外取締役、選んだのは「うるさい人」

社外取締役を務める宮内義彦氏は、オリックスのシニア・チェアマン

社外取締役を務める宮内義彦氏は、オリックスのシニア・チェアマン

社外取締役を任命するのは正式には株主総会ですが、会社側が候補を挙げるケースがほとんどでしょう。カルビーもそうで、候補は僕が選びました。人選で一番大切なのは、とにかくうるさい人を選ぶことです。当たり前ですよ、株主に代わって経営を監視するんだから。監視役がおとなしくしていたら何の意味もありません。

実際に僕がお願いしたのも、うるさ型ばかりです。キッコーマンの茂木友三郎名誉会長やユニ・チャームの高原豪久社長、オリックスの宮内義彦シニア・チェアマン……、みんな経営には一家言ある人ですよね。僕自身も、回転ずしのスシローグローバルホールディングスなど数社の社外取締役を務めていますが、言いたいことをどんどん言っています。それが役目なんです。

カルビー時代、僕は社外取締役への事前の根回しは一切しませんでした。「今度の取締役会でこんな案件を出しますから、ひとつよろしく」というようなまねは、絶対しなかった。だから案件がなかなか通らなくて、3件に1件くらいは却下されたと思います。特に新規の案件は通らなかった。うるさい社外取締役から「顔を洗って出直してこい」と言われる。「わかりました」と言って、次の会議に出し直すんです。

社外取締役と食事をしたことも、ほとんどありません。宮内さんと雑誌の企画で対談したときに一度あったくらいで、茂木さんとも高原さんともなかった。議論は取締役会ですればいいので、場外で僕が何か言う必要はない。従って飯を食う必要もない。これも当たり前のことですよ。

まあ、みなさん非常にお忙しかったので、もともとご一緒する時間もなかったと思います。ひょっとしたら「あいつは飯も食わせないのか」とあきれておられたのかもしれませんが。(笑)

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松本晃
 1947年京都府生まれ。京都大学大学院修了後、伊藤忠商事入社。93年にジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)日本法人に転じて社長などを歴任した。2009年にカルビーの会長兼最高経営責任者(CEO)に就任。停滞感のあった同社を成長企業に変え、経営手腕が注目されるようになった。11年には東証1部上場を果たし、同社を名実ともに同族経営会社から脱皮させた。18年に新興企業のRIZAPグループに転じ、1年間構造改革を進めたのも話題に。

(ライター 猪瀬聖)

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