もはやベアは過去のもの 給料=あなたの価値の時代に
20代から考える出世戦略(61)
近年はデフレーションあるいはゼロ成長の時代でした。だから物価は下がっているかほぼ上がっていない状態が続いていました。そんな中、ベースアップ交渉は形骸化していったのですが、それに付随する用語だけはあいかわらず賃上げ交渉と言われています。
しかし少なくとも私が直接たずさわった150社以上の会社(そのうち1/3は上場企業です)で、ベースアップの仕組みを「現在」運用している会社は極めて少数派です。もちろん、いつでも使えるようにはしている会社は多いのですが、この10年以上は使う必要がなかったのです。
また、組合からの要望で賃上げ率を決定している会社もほとんどありません。形式的には交渉という体をとっている会社は多くありますが、中身は賞与支給月数の交渉がほとんどです。
給与は市場価値と付加価値で決まる時代
では現在の給与はどう決まるのでしょう。
まず、ベースアップが過去のものであるということは、言い換えると、毎年給与が増えるということも常識ではなくなりつつあるということです。
今もなお、大手企業を中心に毎年給与を増やす会社が多いのですが、本来でいえば給与を増やす理屈は、会社側にはない、ということが言われ始めています。
たとえばあなたがフリーランスで仕事をしていると考えればわかりやすいでしょう。
あなたの仕事がライターで、ブログの記事を書いているとします。1つの記事を書いて○○円、という契約をしていたとして、契約が1年をすぎたから、契約額を増やしてください、と言えるでしょうか? そもそもそんなことを言ったとして、契約額を増やす理由が、企業側にあるでしょうか?
もしそんなことを言えるとしたら、おそらく理由は2つです。
1つ目はこんな理由です。
「私に書ける原稿の量は決まっています。今もっと良い条件で書いてくれという依頼が来ています。その条件は御社の契約よりも50%高い金額です。もしそれ以上の金額を示してくれるなら、ブログを書き続けますが、そうでなければ他社に移ります」
2つ目はこんな理由です。
「私の記事は常に検索上位に表示され、サイトのページビューに大きく貢献しています。だからその貢献度合いに応じて契約額を増やしてください」
1つ目の理由は、ライターの市場価値が高まっているからそれに合わせて報酬をふやしてほしい、というものです。企業側がライターを手放したくないとすれば、市場価値にあわせた報酬増額をのまざるを得ないでしょう。
2つ目の理由は、ライターが書いた記事の付加価値が大きいということです。だからそこから生まれる価値の一部を配分することも、納得のいく理屈です。