仕事と「がん」 職場の役割は働き続けるためのケア
産業医・精神科専門医 植田尚樹氏

写真はイメージ=PIXTA
社員がいきいきと働き、高いパフォーマンスを発揮する職場をつくるには何が必要か。産業医として多くの企業で社員の健康管理をアドバイスしてきた茗荷谷駅前医院院長で、みんなの健康管理室代表の植田尚樹医師に、具体的な事例に沿って「処方箋」を紹介してもらいます。
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日本では、2人に1人が一生のうちに「がん」になるといわれています。また、生産年齢人口(15~64歳)では3人に1人が、がんになっています。がんは身近な病気であり、誰もがなりうる病気なのです。治療法にも、がんを切除する手術や抗がん剤による化学療法、放射線でがん細胞を破壊する放射線療法に加え、体内から異物を排除する免疫の力を使った免疫療法などがあり、がんの性質にあった、またその人にあった選択ができるようになりました。
がんと向き合い働く
がんを発症したからといって、すぐに仕事を辞めて治療に専念する方は多くはないと思います。医療費もかかりますし、なにより仕事に生きがいを感じている方が少なくないからです。会社としては、生産性だけを考えるのではなく、社員の人生も考えながら雇用を継続していくことが求められます。
がんと向き合いながらの就労では、体調を崩さないことが第一となるでしょう。また、会社としては階段からの転落など、労働災害のリスクを考慮して、職場環境を整えることが必要となるでしょう。
IT企業に勤務する40歳代男性の事例です。40度以上の発熱があり、頭が痛いため病院で受診したところ、脳にがんが見つかりました。さらに検査したところ、肺からの転移だったことが判明。放射線療法と免疫療法による治療を行いました。2カ月間の休職の後、復職希望があり、人事部からの依頼で産業医が面談しました。