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「つながり」が思考のベース

しかし、こうした「説明に基づく納得を求める態度」を部下が取ること自体、時に上司の側には「生意気」と映りやすい。腹を立てて部下を怒鳴ってしまったり、成績評価を下げてしまったりすると、部下は傷つき不満を抱えてしまう。若手からすれば当たり前の手順を踏んでほしかっただけなのに、上司は「使いづらい」「文句ばかり」などと受け取る。その結果、ネガティブな誤解を招き溝は深まる。そのまま気詰まりな関係が続くと「認めてもらえない」「居場所がない」という気持ちが「辞めたい」につながっていく。

平賀充記氏

平賀充記氏

どちらにとっても不幸な、こうした行き違いを避けるには「若い働き手のマインドを上司・マネジャー世代が感じ取ることが現実的な解決につながりやすい」と、平賀氏はアドバイスする。「とにかくやれ」式の理不尽な扱いに慣れていた上司世代とは、20代の感じ方はかなり異なる。この前提を理解しないと水掛け論に終わりかねない。「会社に残ってほしいのなら、若い層に変わることを求めるのではなく上司側が自ら変わるべきだ」と、平賀氏はまずは20代の考え方を受け入れるところから始めることをすすめる。

上司世代は年齢・役職という縦軸を重んじる「タテ社会」になじんでいる。10年、20年と順応してきただけに、タテ意識が自分の思考法のベースにもなっていそうだ。しかし、今の20代は「ヨコ社会の住人。SNSを通じて育んだ『自分たち』というつながりが思考のベースにある」(平賀氏)。立場がフラットなヨコ社会では「上から目線」が嫌われることでも分かる通り、共感やリスペクトが大切とされる。力ずくの横暴は批判の的になる。上司からの「説明なき業務命令」は、これに近い受け止められ方をされやすい。

「会社の常識は世間の非常識」ともいわれるように、企業にはそれぞれの社風や行動様式がある。社内に閉じているともいえるだろう。だが、「スマートフォン世代は感覚的に外の世界とつながっていて、『我が社では』式の内向き思考を狭苦しく感じやすい」という。社内ポストを奪い合う「出世」というシステムもそうだ。上司世代の仕事目標に関して「のし上がっていく意味が分からない」と疑問を覚える人が少なくない。そういう意識を理解しないで「若いうちの苦労は買ってでもしろ」と説教を垂れるのは、パワーハラスメントと映りかねない。「本人のためを思って」という上司の自己弁護は、部下からの被害申告とむなしくすれ違う。

「ワンピース世代」の特徴とは

バブル期を象徴する広告コピーに、ドリンク剤の「24時間戦えますか」がある。今となっては感覚のずれを禁じ得ないが、上司世代は「24時間は無理」と時間のほうに反応する。一方、20代は「どうして戦う必要があるのか」と戦う行為そのものに懐疑的なようだ、と平賀氏はみる。とりわけ、社内で同僚と競争させられることには抵抗感を覚えやすいのではないか。

1997年から連載が始まった漫画『ONE PIECE(ワンピース)』。22年という連載期間がぴったり重なっているところから、今の20代を象徴する作品といわれる。「ワンピース世代」という言葉すらあるほどだ。「手柄を独り占めせず、仲間と一緒に危機を乗り越えていく登場人物たちに共感する20代は多い」(平賀氏)

「いつかはクラウン」のような右上がりの夢を、「坂の上の雲」として多くの働き手が共有できた時代は去った。社内の忘年会ですら、1杯目がビールでそろわず、カシスオレンジやペリエの注文が混じる時代なのだ。「部下というくくりでいっしょくたに扱われることに抵抗感が大きい。『個』でみてもらいたがる。その期待にこたえられないと、いつまでも距離が縮まらない」と、平賀氏は指摘。「承認欲求や甘えと片付けてしまわないで、時間を割いて丁寧に向き合う必要がある」と、上司の手抜きを戒める。

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