職場で知るべき大人のADHD 治療と仕事環境配慮を
産業医・精神科専門医 植田尚樹氏

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社員がいきいきと働き、高いパフォーマンスを発揮する職場をつくるには何が必要か。産業医として多くの企業で社員の健康管理をアドバイスしてきた茗荷谷駅前医院院長で、みんなの健康管理室代表の植田尚樹医師に、具体的な事例に沿って「処方箋」を紹介してもらいます。
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「発達障害」という病気をご存じでしょうか。コミュニケーションをとるのが苦手だったり、絶えず動き回って落ち着きがなかったり、何かにひどくこだわったり、症状はさまざま。2005年に施行された発達障害者支援法は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害」と規定しています。子供のころに発症する病気と思われるかもしれませんが、大人になってから診断されるケースもみられます。
いまや発達障害は子供だけの問題ではありません。発達障害者支援法は2016年に改正され、就労支援に関する規定で、事業主に対して「能力を正当に評価し、適切な雇用の機会を確保するとともに、個々の発達障害者の特性に応じた適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならない」と求めています。

大人の発達障害でよく見られるのが、注意欠陥多動性障害(ADHD、Attention Deficit Hyperactivity Disorder)とアスペルガー症候群(自閉症スペクトラム障害に含まれる)の2つとされます。今回はADHDについてみていきます。
ミスを繰り返す部下
あるメーカーでの事例です。営業部門の責任者がノイローゼ気味で勤怠に支障を来していると、人事部が産業医に面談を依頼しました。話を聞いてみると、配属された男性社員が毎日毎日ミスを繰り返してストレスになっているというのです。発注の数量をまちがえる、納品の期日をまちがえる――といったことを繰り返し、結果としてその上司が取引先からのクレームへの対応や事後処理などに追われているというのです。