変革の道は「ワクワク発見」から 問いを立てる力とは
UWC ISAKジャパン 小林りん代表理事(2)
この授業の実践の場が、年に2回行う「プロジェクトウイーク」だ。生徒は通常の授業を1週間離れ、チームを組んで「プロジェクト」に携わる。たとえば、1年生のテーマは「自分の身の回りで変えたいこと、不満に思っていること」。

デザイン思考を取り入れたカリキュラムを磨いてきたブレンダン・マクギボン氏=UWC ISAK提供
あるチームは「カフェテリアの待ち時間が長い」問題を取り上げた。どこにボトルネックがあるか考え、列のつくり方、メニューの表示方法、お皿や配膳の場所、注文の仕組みなどを次々と変えながら試していったという。小林氏は「カフェテリアの床にシールがいっぱい貼られ、行くたびにやり方が少しずつ変わっていきました。そんな試行錯誤の様子が、とても興味深かった」と振り返る。生徒の成長を肌で感じる機会にもなった様子。この活動は、中長期的な課題に「格上げ」され、なお改良を重ねている。
プロジェクトには、UWC ISAKならではの多様性が反映されることも多い。あるチームは、寮で暮らす生徒の衣類に注目した。スーツケースに収まらないほどに増えた衣類を捨てる生徒がいる一方、暖かい国から来て冬服を持たない生徒もいたからだ。その活動は、校内に衣類のリサイクルボックスを置き、両者をマッチングさせるという形で実を結んだ。
社会を変える挑戦、失敗からも学び
学年が進むと、テーマは「社会に目を向けたら、何ができるか」という視点に進化する。生徒たちは校外にも積極的に出ていき、地域の人や企業に話を聞き、ニーズを調べる。そして地元の商店街や小中学校などまで巻き込んで、社会での活動に挑むのだ。そんななかから、ネパール大地震の復興支援で大きな成果を上げ、報道もされた「プロジェクトネパール」のような成功事例も生まれた。
ただ、小林氏は「プロジェクトの成否は重要ではない」と言う。
「重要なのは、実際に行動し、自分も変化を起こしうるのだと実感することです。うまく成果が出れば、成功体験となって自信がつきます。一方、たとえ失敗しても学べることは多い。何よりも、失敗したからといって世の中の終わりではないと分かります(笑)。世の中の多くの人たちは、周囲で何か問題があったときに、文句を言うか、見て見ぬふりをして背を向けます。そうではなく、自分で行動して状況を変える。少なくともそれにトライする人になってほしいと思っています」
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学校法人ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事。都内の高校からカナダのUWCに編入。1998年に東京大学経済学部を卒業した後、国際協力銀行などを経て2005年にスタンフォード大学大学院で国際教育政策学の修士課程を修了した。国連児童基金(ユニセフ)のプログラムオフィサーとしてフィリピンでストリートチルドレンの教育問題にかかわり、14年に現在の学校の前身であるインターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)を設立。UWCの加盟承認を受け、17年8月に現在の校名になった。
(ライター 渡部典子)