変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

グループ人事、全体で最適めざす

「これによりグループ各社にどんなタイプの人材がいて、どんな事業を担っているかが見えるようになり、人事異動・配置や育成の計画を立てやすくなります。これまでは現場や人事担当の『勘と経験』頼みの部分が大きかったのですが、データを参考にすれば、よりよい人事施策が実現できると思います」

HRテックは「勘と経験」頼みの人事を変えていきそうだ

HRテックは「勘と経験」頼みの人事を変えていきそうだ

――なぜ管理職から始めたのですか。

「グループが急拡大して子会社が増えたのが大きいです。経営方針として、共通のものさしを作って管理職を評価し、会社の壁を越える人事異動を適切に行い、グループの成長につながる経営幹部を育てるようめざしています。現在の経営陣は、次世代の経営幹部には構想力と遂行力の2つの軸が重要と考えています。タイプ分けなどを通じて人材の特性がわかっていけば、そういう力を伸ばす人事もできるようになると思います」

――社員向けのHRテックは?

「グループの他の会社や今と違う職種で自分の可能性を試したいという社員に向け、2016年に『キャリアチャレンジ制度』を導入しました。この制度をもっとうまく動かすため、HRテックを使った支援モデルが必要と考え、19年に研究を始めました」

「現在、グループの29社が『この職種の人材を社内募集します』という情報をグループのイントラネットで公開しており、約2万人がこれを見られます。募集は毎年450~500件に上り、18年は90人以上が新しいキャリアを実現しました」

「ただ、せっかく応募しても不合格になる人もいます。個人の能力やそれを生かせる立場、働き方について、会社が全部つかんでいるわけではありませんし、自分自身分かっていない人だっているからです。キャリアの選択で迷う社員に参考にしてもらえるように、人事が蓄積してきた異動履歴などを利用して情報提供できないかと考えて研究を始めました」

日本の人事の「見本」に

――社員のキャリアデータをどう使うのですか。

「グループの人事データベースには現在、社員延べ約7万人分の情報があります。ここから異動履歴のデータを抽出して分析し、『こういうタイプの人は、このポジションで活躍できる確率が高い』という予測モデルを構築しました。このモデルに社員の情報を入れると、より活躍できそうなポジションを推薦する内容です」

「キャリアチャレンジ制度では、社内のキャリアアドバイザーに相談できる仕組みも用意してあります。その際に、アドバイザーが予測結果を参考にできないかと考えています。人の経験と予測モデルが融合するのが、望ましい運用の形だと思うからです」

――あくまで参考なんですか?

「HRテックは、人間の体温を感じられるような人事施策の実現に向け、データで人間を補完するものだと思います。勝手に生体データを収集されたり、カメラで画像を撮られたりしたら、嫌がる人も大勢いるでしょう。AIが決めた人事をロボットから言い渡されるようなのは、私だって嫌です」

「パーソルグループは『Advanced HR showcase』(先進人事のショーケース)をポリシーとしています。人事に関しては先駆者として挑戦し、日本中の会社の見本になろうという意味です。HRにも積極的です。様々な仕組みやモデルをつくり、グループのコンサルタント業などにも生かしていきたいです。ただ、その場合にも、やはり人の気持ちは大事にしたい。そういう研究を忘れずに続けていく必要があると思っていまます」

(笠原昌人)

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