0点でも「おまえはやれる」 熊高がくれた自信
高浜正伸・花まる学習会代表(下)

高浜正伸・花まる学習会代表
「メシが食える教育」を掲げて注目される花まる学習会の高浜正伸代表(60)は、名門の県立熊本高校で野球とナンパに明け暮れ、成績は右肩下がりに。それでも、認めてくれる先生やガールフレンドの存在が自信を与え、支えてくれた。大学院を卒業するまで三浪四留と時間がかかったが、花まる学習会の揺るぎない理念が出来上がったのも、自分を信じ、心の声に耳を傾け続けたからこそ。若い世代にも「焦らず幅広く挑戦し、自分に合うことを見つけてほしい」とエールを送る。
ずっと心に残ったのは「好きに生きろ」という言葉だった。
高校では野球と女の子が生活のすべてだったので、成績はどんどん下がりました。最初は結構上位にいたのですが、最後は500人中ビリに近い方。「ウサギとカメ」のウサギですね、典型的な。最初は前を走っていたのに、いつの間にか「カメはだいぶ前にゴールしております」という状況でした。
それでも、旧制中学の流れをくむ学校らしく、校風として「勉強しろ」とは一度も言われませんでした。保護者も普通は言いますよね。「先生、何かおっしゃってくださったんですか?」とか。熊高は親も何も言わないし、先生も何も言わない。主体性を大事にしてくれました。
影響を受けた先生といえば、高3の担任だった数学の平野先生です。怖くて有名で、今だったら許されないでしょうけど、黒板消しで生徒の頭をボコボコにしていました。でも、なぜか僕のことは認めてくれていて、全然殴られませんでした。「お前は自分でいつかやるやつだって、おれは分かっている」と言われました。
物理か何かのテストで零点を取ったとき、おもしろがって「高浜君の零点の答案」と書いて貼っていたら、平野先生がダーッと走ってきたんです。わぁ、いよいよ殴られるか、と思ったら「ばか、『君(くん)』はいらないだろうが」。おもしろい人なんです。なぜ認めてくれたのかは、いまだにわかりません。でも「好きに生きろ」と。「好きに生きられるやつがそもそも少ないんだ。お前はきっとそれをやれるから」というようなことを言われたのを覚えています。これは力になりました。