勤務時間の6割はムダ 働かない技術でデキる管理職に
『働かない技術』 新井健一氏

「時間でなんとかする」働き方は最長3年で卒業すべきだと訴える
「働き方改革」が必要だということは、頭では十分にわかっている。でも、実際は定時に帰れることが少ないし、有給休暇も十分に取得できない――。こんな会社員に対して「働かないためのスキルを身につけよう」とアドバイスするのが、今回取り上げる書籍『働かない技術』だ。日本の会社では、勤務時間の約6割が無駄でできているという。どうすれば働き方の"肥満体質"から脱却できるのか。気鋭の経営コンサルタントが指南する。
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新井健一氏
著者の新井健一氏は1972年生まれ。神奈川県出身です。早稲田大学政治経済学部を卒業後、大手重機械メーカーに就職。コンサルティングファームや医療・IT系ベンチャー企業役員を経て独立しました。経営人事コンサルティングから次世代リーダーの育成まで幅広くコンサルティング・セミナーを展開しています。著書には『いらない課長、すごい課長』『いらない部下、かわいい部下』(いずれも日本経済新聞出版社)などがあります。
「時間でなんとかする」働き方は卒業せよ
日本では働き者が評価されます。長時間がんばることは美徳です。しかし「働かない」ための技術を必死で磨かなければ、今後あなたは会社で生き残れない、と著者は警告します。8時間労働という慣行は、生産現場を中心とする工場労働に適合したシステムです。一方、知識労働者にとっては生産性を高めるために集中していられる時間は3時間程度だとされています。「あなたの勤務時間の62%はムダでできている」と本書は指摘します。
なぜ、日本社会は働き者を評価するのでしょうか。日本の職場は「メンバーシップ型」組織です。欧米の「ジョブ型」組織と明確に区別できます。この特性が、長時間労働を招く一因になっている、と著者は指摘します。ジョブ型は職場が変わっても自分の専門(職種)は同じです。そのため、例えば月単位や年単位の繁忙期が前もってわかります。労働時間のコントロールや休暇取得がやりやすいのです。一方、メンバーシップ型は、多くの場合頻繁な人事異動を伴います。しかも全く畑の違う分野に移ることがザラです。その場合、一から仕事を覚えることになり、必然的に業務をこなすのに時間がかかってしまいます。
異動すれば、その職場では「素人」です。ということは「時間をかけて何とか仕事をこなす」ことが可能になります。しかし著者は「時間でなんとかする」働き方は最長3年で卒業するべきだと強く訴えます。悪い慣習から脱却するには、管理職の意識改革が不可欠です。
業務の優先順位を選別する視点
さて、管理職であるあなたを想像して下さい。次の2つのケースで、どちらの仕事を優先しますか? 【1】「重要度」が高く、「緊急度」は低い業務 【2】「重要度」が低く、「緊急度」は高い業務……。
「重要度」が高く、「緊急度」は低い業務を優先すべきだというのが著者の答えです。
そうして、いつの間にか納期が迫り、一番優先順位が高い業務に格上げされる。
このような業務を一番良くコントロールしなければ「時間でなんとかする働き方」から脱することはできないし、仮に当該人材が管理職になれたとしても、ダメな管理職になりやすい。
それは、管理職としての職場マネジメントが、目先の緊急度や経過に振り回され、成果や働き方「改革」につながる重要な業務に、いつまでも着手できないからである。
(第4章 「働きすぎる」ミドルの末路 123ページ)