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中1生の練習が終わると、15分間だけ上級生たちがボタンを握った。緩い空気が一瞬で引き締まる。ボタンを握る姿勢からして、中1生のそれとはまるで違う。ようやく「ガチの競技」の雰囲気がわかった気がした。

できる生徒の「プライド共存」に難しさ

部としての歴史は、それほど長くない。1992年に同好会として発足し、05年にクイズ番組「アタック25」の高校生大会で優勝。その翌年に部に昇格した。今では「高校生クイズ」で3連覇するなど圧倒的な強さを誇る。

「関東クイズ連合(KQA)」のメンバーでもある。開成に加え、筑波大学付属高校、都立立川高校、早稲田中学・高校、神奈川県立横浜翠嵐高校、同横須賀高校、慶応義塾高校、千葉県立船橋高校、埼玉県立浦和高校、栄東中学・高校、栃木県立宇都宮高校が持ち回りで、例会と呼ぶ大会を主催している。大会を仕切ったり、他校と連絡を取り合ったりするのも部の幹部の重要な役割だ。

発足当時から顧問を務める池田良博教諭は「テレビのクイズ番組はゲーム的な要素が加味されていますが、部員たちが普段取り組んでいるのは純然たる早押し形式の『競技クイズ』です。これは最後まで話を聞かないと結論がわかりにくい日本語の語順だからこそ成り立つ独特のルールなんです」と話す。

今では学校を代表する「名物部活」になったが、部員が集まらず廃部の危機を感じたこともあったという。一部のクイズマニアが自分たちだけで楽しんでしまい、「下級生への指導ができていなかった時期もありました」(池田さん)。先生の高校生部員への働きかけで、上級生が下級生の面倒を見る文化が少しずつ根付いてきた。

「今はクイズブームで新入部員が多く、夏合宿にはおそらく80人強が参加するでしょう。でも中1の終わりにはだいたい半分くらいに減ります。実際入ってみると、結構厳しいとわかるんですね」(池田さん)

競技クイズの奥深さや先輩のレベルの高さを肌で感じ、ちょっとやそっとの努力では通用しないとわかる。それで多くが脱落するというわけだ。上級生、下級生の別なく、負けず嫌いの部員同士が激しく火花を散らすこともある。強くなりすぎて下級生とやるのがつまらなくなり、顔を出さなくなってしまう部員もいる。「彼らのプライドのようなものを共存させるのは意外と難しいんですよ」と池田さん。なんとなく、わかる気がする。

現在、クイズ研究部は9月21~22日の文化祭に向けて準備を進めている。

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開成中学校・高等学校(東京都荒川区)
 創立は1871年。1982年以来38年連続で高校別東大合格者数首位にある。高校の1学年は約400人。2019年の東大合格者数は186人。東大・京大・国公立大学医学部合格者数は、19年まで5年間の平均で238.2人とこちらも首位。卒業生には、衆院議員の岸田文雄氏、マネックス証券の松本大氏、演劇家の蜷川幸雄氏らがいる。

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