「エアトリ」起業、大阪星光で聞いた神父の言葉が支え
吉村英毅・エボラブルアジア社長(上)
星光学院で特に印象に残っているのは、神父の話だった。
大阪星光学院はイタリアの修道会であるサレジオ会が1950年に設立したカトリックの男子校です。ですから、学校には神父様が何人もいらして、毎朝神父様のお話が校内放送で流れる時間があったのです。
中学高校の男子ばかりですから、そんな話は馬耳東風になりそうなものですが、そんなことはなかった。神父様の話は聖書の話を直接的にすることはほとんどありませんでした。一般的な日常生活の中での話を取り上げて、人としての倫理観について話されていた。その一つ一つが非常に工夫されていて、面白いのです。しかも、それを毎日聞いていると、根本的な倫理観の大切さが少しずつ自分の身の中に入っていったようでした。
神父様で英語の先生でもあった並木豊勝神父も、人として何が良くて何がダメかという話を繰り返しなさっていました。ありきたりに聞こえるかもしれませんが、ウソをついたらダメだし意味がない。取り繕ったりすべきではない。そんなお話をいつも聞いていました。
起業の夢は語らなかった。
起業したいと思うようになっていたのに、そのことを周囲に話すことは一切ありませんでした。なぜでしょうね。父や祖母は私が父の会社を継ぐと思っていたし、学校でもそんな話をした記憶はないのです。そもそも、私が大学に在学中のころでも、起業は今ほど身近な選択肢ではありませんでした。
大学を卒業するときにはすでに起業していて、社員が10人ほどいました。正直にいうと、実は少し就活をしてみたことはあります。このままサラリーマンにならずに社会に出るのではなく、一度は会社勤めを経験して人間関係を作ってみようかなと思いまして。5、6社に応募しましたが、見事に全部落ちました。面接にいく手前で落ちた会社もありました。
大阪星光学院に在学中は起業のことは一切話しませんでしたが、その後、起業してからの苦しい時期に私を支えてくれたのも、在学中に神父様や先生たちから日々聞いていた言葉でした。
(藤原仁美)
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