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「しょうがないな、T田は……。でも、あいつも悪気があったわけじゃないから」とH坂が笑いながら言うと、R子はムッとした。

「悪気があるとかないとかじゃなくて、嫌がっている人がいるんだから、セクハラですよ!」

R子の強い口調に驚いたH坂は、「とりあえず、T田には言っておくから」と何とかR子をなだめた。

SNSをきっかけに取引先から契約解除の依頼が

H坂から注意を受けたT田は納得がいかない様子だった。

「宴会を盛り上げただけですよ。それに、別に女性を触ったわけじゃないし、俺が勝手に脱いだだけだし、問題ないんじゃないですか?」

「いや、お前の裸なんか誰も見たくないだろ。女性社員に送ったらヒンシュクだぞ?」

実はH坂も本音ではR子が少し過剰に反応していると思っていたので、笑いながらT田を叱責した。T田も、「えー? 俺の若い肉体を見て喜ばない女子もいるんですかね?」など、冗談めかして笑っていた。「とにかく、そういったものに過剰に反応する女性もいるから、気を付けるように」と軽く注意をして終わった。

数日後、取引先のある会社の総務部長からH坂に電話が入った。

「申し訳ないのですが、今月で御社との契約は解除させてください」

何の説明もなく、淡々とした口調で突然言われたH坂は驚いた。

「いや、ちょっと待ってください。突然どうしてですか? 何か事情があるのでしょうか?」

相手の総務部長は、冷静だが若干怒りを含んだ口調で理由を告げた。

「御社の営業のT田さんのとんでもない動画がSNSに出ていますよ。宴会の様子だと思いますが……」

「弊社も昨今はコンプライアンスを重視していますし、こういった動画を載せる社員がいるような会社さんとのお取引は続けられません」

何の話だかさっぱり分からなかったH坂は、相手に問題のSNSについて教えてもらい、即座に確認した。すると、T田が先日の宴会での様子を個人のSNSにアップしていたのだった。しかも、動画の内容は、T田が全裸で局部をお盆で隠しながら、ふざけて踊っているものだ。

そこには、他の社員が大笑いしている様子も写っており、知っている人が見れば、Aリース社の宴会であることはすぐに分かるものだ。

他の人のコメントを見ると、

「うけるー!」

という内容から、

「今どき宴会でこんなことしている会社ってどうなの?」

「これってセクハラじゃないの? 会社の質を疑うわー」

といったものもある。

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