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なぜなら人事コンサルタントとして、セレクションアンドバリエーションは感情パズルをしているのではないからです。実際に会社の人事の仕組みを作っているのです。

「成果が同じだったら、同じ賞与額でいいですか? 一度決めたら今後数年以上は全社員にそのような仕組みを適用することになりますよ。本当にそれでいいのですか?」と尋ねているのですから。

そのような意思決定を求めると皆さん黙り込みます。

そしてケースCになると「田中さんの賞与はもっと減らすべきだ」という人が増えます。一方で、成果が同じなら賞与が一緒でよいのではないか、というケースAタイプもいらっしゃいます。ケースBを踏まえ、年齢や現在の役割を踏まえた調整がってもいいのではないか、という意見もあります。

さて、これらのケースを踏まえ、公平さの基準を整理するとすればそれはなんでしょう?

実際問題として「公平」の概念の定義はほぼ不可能です。特に人事の領域では、公平な人事、というものは設定できないと断言できます。ではなぜそんな無責任な論をここで示しているのかといえば、人事の現場でこのキーワードがとてもよく取りざたされるからです。

それは「公平」ではなく、「不公平」というキーワードです。

公平さの基準は「損」をしているかどうか

公平さの定義が不可能なのに、不公平だ、という人たちはどのような基準で意見をするのでしょう。

それは一言でいえば「損をしている」という感覚です。

前述の例でいえば、ケースCがわかりやすいでしょう。このケースの場合、実は山田さん側も田中さん側も、いずれも不公平だ、ということが多いのです。

山田さん側は「月給30万円なのに昨年対比で大きく成長した。だから1億円の売り上げをあげたこと以上に評価されてしかるべきだ」と主張します。一方、田中さん側は「これまでの貢献を踏まえた処遇をすべきだ。単年度の売り上げで評価すべきではない」と主張します。

いずれの場合にも「本当ならもっともらえるはずだ」がという基準が根底にあります。そしてこの基準にたいして「もっともだ」と思っている人は、残念ながら出世しづらい傾向があるようです。

そのあたりの秘密は次回以降でお示ししましょう。

平康慶浩
 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。高度人材養成機構理事リーダーシップ開発センター長。

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