変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

Y主任が支店内にある営業社員の行動予定表をチェックすると、A男の欄には「〇〇様 内見」とある。やはり、今日は朝一番で物件案内の予定だったようだ。始業時刻はとっくに過ぎている。もしかして、何か事故にでも巻き込まれたのかとY主任が不安に思っていると、A男から支店に電話が入った。

「おい、A男、今どこだ? ○○様から待ち合わせ時間を過ぎてもお前が来ないって電話があったぞ」

Y主任がA男に言うと、A男は沈んだ声で答えた。

「昨日、祖父が亡くなって……。なので、今週は休みます」

「いや、そうだったのか。それは大変だったな。だけど、そういったことはすぐに連絡してくれないと、お客様にも周りにも迷惑がかかるだろ」

「……はい。でもショックでそれどころじゃなくて……僕おじいちゃん子だったので……」

「そうかもしれないが、黙って休まれたら皆も心配するだろ」

A男は、「月曜には出社します」と言って電話を切った。

ある日、退職代行会社から電話が……

次の月曜に出勤してきたA男に対して、Y主任は声をかけた。

「A男、大変だったな。今日の夜、ちょっと付き合えるか?」

「はい。大丈夫です!」

祖父を亡くして落ち込んでいるかと思ったが、いつもの明るいA男の様子にY主任は意外な思いだった。

その日の夜、Y主任はA男を居酒屋に誘うと、今回の件について諭した。

「今回のことは大変だったな。肉親を亡くすのは辛いことだと思う。いろいろなことに気が回らなくなるのも理解できる。でも、周りの人に迷惑をかけたり、心配をかけたらいけないだろ。まずは会社に連絡を入れてくれないと、俺たちもどうフォローすればいいか分からないし」

最初は神妙な顔をして聞いていたA男も、Y主任が優しく諭すと、最後には、

「次からは気を付けます。頑張りますので、これからも指導よろしくお願いします!」

と笑顔を見せた。Y主任も(まだ学生気分が抜けないだろうし、少しずつ指導していかないと)と改めて教育担当として気が引き締まる思いだった。

翌朝、またもや始業時刻を過ぎても出勤してこないA男にY主任は電話を入れた。しかし、留守電に切り替わってしまう。お昼近くまで何度か電話したが、一向に出ない。

欠勤については必ず連絡するように昨夜話したばかりだったので、(もしかして何かあったのか?)とY主任は心配になった。Y主任は午後に外出する予定だったので、少し早めに出て、A男のアパートを訪ねてみた。

チャイムを鳴らしてみたが、シーンとして出てくる気配はない。(いないのかな?)とY主任はしばらくして立ち去った。

外回りの用事を済ませ、Y主任は支店に戻る途中もA男の携帯に何度か電話を入れるがやはり出ない。(外で事故にでも巻き込まれたのか?)(もしかして、すでに支店に出社してるのかな?)などと考えながら支店に戻ると、I支店長が険しい顔でY主任を手招いた。

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