20年も前から「IoT」、データが生むコマツの競争力
ハーバードビジネススクール教授 ウィリー・シー氏(中)

コマツはデータを使った建機の活用をすすめる
世界トップクラスの経営大学院、ハーバードビジネススクール。その教材には、日本企業の事例が数多く登場する。取り上げられた企業も、グローバル企業からベンチャー企業、エンターテインメントビジネスまで幅広い。日本企業のどこが注目されているのか。作家・コンサルタントの佐藤智恵氏によるハーバードビジネススクール教授陣へのインタビューをシリーズで掲載する。3人目は、製造業のマネジメントを研究するウィリー・シー教授だ。
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ハーバードビジネススクール教授 ウィリー・シー氏
佐藤シー教授は、2018年にハーバードビジネススクールのケース「コマツ・コムトラックス:建設機械の位置管理と需要予測」を出版しました。コマツといえば、中国市場での展開やグローバル化についてのケースが有名ですが、今回、あえてコムトラックス(KOMTRAX=コマツが開発した建設機械の情報を遠隔で確認するためのシステム)に注目した理由は何ですか。
コマツのデータ収集能力に興味
シー 私が特に興味をもったのはコマツのデータ収集能力です。コマツは他の企業よりもずっと早い段階から「広範囲にわたってデータを収集すること」の価値を理解していました。現在、多くの企業が「IoTとデータ収集」の重要性について唱えていますが、コマツは「IoT」(=Internet of Thingsモノのインターネット)なんていう言葉が世の中に出てくるずっと前からデータ収集を続け、それをビジネスに生かしていたのです。
なぜコマツは長年にわたってデータの収集に注力してきたのでしょうか。その目的は主に3つあります。1つめはコマツの建設機械を使っている顧客に収益性や操作性を改善してもらうこと、2つめは、顧客のデータを新しい建設機械の開発や既存の建設機械の改善に役立てること。そして3つめは、建設機械の稼働状況を把握することによって、機械のメンテナンスや買い替えが必要な時期を予測し、需要予測にも役立てることです。コマツはウェブサイト上で、コムトラックスを搭載した建設機械(ミニ建機・鉱山機械を除く)の1台当たり月間平均稼働時間を掲載しています。稼働状況を販売代理店、顧客など誰にでも見られるようにしているのです。