相次いだ不祥事も教材に 名門・麻布は失敗に学ぶ
麻布中学・高校(下) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ

2014~17年は、体育館新築のため外部のグラウンドを借りて運動会が行われたが、2018年から学校での開催に戻った
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入学式の2日前に火事
自由な校風で知られる麻布。それだけに、自由と勝手を取り違えたトラブルも多い。しかし平秀明校長は「問題を起こしてからが本当の教育」と常々訴えている。トラブルをどういかすのか。
2019年4月6日、麻布の地下室で火事が発生した。消防車が出動し、その日の夜のニュースでは平校長が記者会見をする姿が映し出された。原因は文化祭実行委員会の一部メンバーによる火遊びだった。入学式の2日前に学校が火事になるのだから、新入生の親子はさぞかしびっくりしたことだろう。
文化祭の開催は延期され、結局6月中旬に開催された。このとき学校内でどのような話し合いがもたれ、どのような危機感が共有され、どのように教育にいかされたのか、平校長に聞いた。
事件を受けて、学校は文化祭の延期を決定した。不祥事を起こした文化祭実行委員会も活動停止に追い込まれた。そのまま無期延期となり、文化祭が実施できないのではないかとの見方もあった。
本来であれば文化祭が開催されているはずだった4月27日に、全校集会が開かれた。まず各クラスで話し合いがもたれた。その後、中3から高2の生徒は講堂に集まり、話し合いを続けた。当然文化祭実行委員会への批判が多かった。また、主に文化系の部活の立場から、展示の機会がなくなるのは困るとの訴えもあった。さらには自治権を教員に「大政奉還」したらどうかという極論まで出た。
「その様子を中1・中2は教室で放送により聞いていたのですが、途中でいたたまれなくなったのか、50人くらいの中1が講堂になだれ込んできて、先輩たちの前で自分の意見を言う子もいました」(平校長)