相次いだ不祥事も教材に 名門・麻布は失敗に学ぶ
麻布中学・高校(下) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ
その後、新しい文化祭実行委員会を組織し直して、なんとか6月中旬の開催にこぎつけた。
麻布において、文化祭や運動会にまつわる不祥事はこのときが初めてではない。2013年には運動会実行委員会の不祥事が多数発覚し、運動会が中止された。そのときも、運動会が実施されるはずだったその日に、全校集会が開かれて、麻布の自治についての話し合いがもたれた。
不祥事のオンパレード!?
平校長は、麻布学園が刊行する「麻布学園20年の記録 1995-2014」という学校史を持ち出して「ここに不祥事のオンパレードが載ってるんですよ」と苦笑い。以下、不名誉な記録の要点を抜粋する。

学校史「麻布学園20年の記録 1995-2014」には不祥事についても詳細に記載がある
2002年、文化祭実行委員会のメンバーが、近隣の有栖川公園で不祥事。各自治団体は、「一度失われた自由はたやすくは取り戻せない。しかし、我々には先輩方が100年の時間をかけて今まで創(つく)りあげてきた自由の歴史がある。それを断ち切るわけにはいかない。未来へとつなげる義務があるのだ」と文書で表明した。
2005年、文化祭で調理・販売されていた「豚丼」が原因で、集団食中毒が起きた。衛生観念の低さが直接の原因だった。その後数年間、文化祭や運動会での調理は自粛された。一方で、文化祭自体が入場者数至上主義や売上至上主義に陥っていることも指摘された。
2006年、校長を座長とする「危機管理会議」が設置され、緊張感漂うなかで文化祭が開催された。無事に終了したに見えたが、後日、約30万円もの不明金の存在が明らかになった。7月には運動会実行委員会メンバーの集団飲酒が発覚する。このころから「麻布の自治の危機」が本格的に叫ばれるようになる。
2007年、「当選したら運動会は開催しない」を公約に掲げる生徒が運動会実行委員会の選挙に立候補した。結局この候補は落選するが、皮肉なことに、当選した運動会実行委員らによる飲酒が発覚し、結局運動会は中止になった。
その後の職員会議では、運動会実行委員会と文化祭実行委員会の両委員会に構造的な問題があることが指摘された。メンバーが固定化し、内輪ノリが見られ、一種の「特権階級意識」をもっているのではないかという指摘だ。権力腐敗そのものである。まるで社会の縮図を見ているようだ。