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木暮桂子氏

木暮桂子氏

「きょうから気をつけよう」と考えるのは結構なことだが、「ぼんやり意識するだけではきちんと身につかない」と、木暮氏は指摘。訓練が必要なのだという。まずは自分がどういう顔をしているかを、常に考える癖をつける。できれば動画を撮って、言葉との同調度合いを確かめる。違和感を覚えるようなら、そのタイミングで本来、すべきだった表情・しぐさを考え、修正を試みる。実際、木暮氏が株主総会や決算発表を前に、経営者をコーチする場合はリハーサルを繰り返して、望ましい見え具合のコントロール術を指南するそうだ。

木暮氏がとりわけもったいないと感じるのは、見た目がビジネス提案の「予選落ち」を引き起こしやすい点だ。せっかく練り上げた企画を持ち込んでも、言葉以外の第一印象がよくなかったせいで、門前払いを食ってしまうことはざらにあるという。「検討してもらう以前の段階で、ちゃんと相手にしてもらえないのでは、ビジネスチャンスが閉じてしまう」(木暮氏)

視線の角度がメッセージになる怖さ

視線の角度や、椅子に腰掛ける深さ、両足の置き方など、様々な所作がそれぞれにメッセージを発する。狙い通りのパフォーマンスであれば構わないが、多くの場合、「意図していない気持ちや情報を発信してしまっている」(木暮氏)。決算発表の際に、財務担当者が妙におどおどしていたり、資料の紙を落としたりすれば、財務内容に問題がなくても、妙な疑念を招きかねない。そういった表舞台ではない、普段の職場でも「本人が思っている以上に、周囲から視線を浴びている」という。だが、今でも見た目を軽んじる人は少なくない。「外見を整えることが単なる『カッコつけ』だと、誤解している人は今もいる」(木暮氏)。

転職や昇進にも「身なり軽視」は致命的なダメージを与えかねない。木暮氏が企業の採用担当者に尋ねたところ、「面接の部屋に入ってきた時点で、評価に関して7、8割の仮説を立てている」と答える人が多かったそうだ。志望者が話し始めてからの時間は、残りの2、3割を検証するのに使われる。しかし、「仮説が覆るケースはまれ」という。言葉のやりとりが占める比重の軽さは、いささか不合理にすら思えるが、「積み重ねた経験知に基づく判断であり、相応の妥当性がある」と、木暮氏はみる。

同じ企業の中で過ごしていれば、「あんな格好に見えるけれど、実はあの人はすごい」「外見と実力は別物」といった、ポジティブな評価を受けることも可能だろう。だが、転職の場合、データでしか経歴や人柄を知り得ない以上、見た目のイメージは影響力が大きい。つまり、服装やしぐさが本人の「人格」「資質」「能力」のものさしになってしまいやすい。「初めての商談や取引先訪問も状況は同じ。相手は見た目を最大の手がかりにする」(木暮氏)

「黙って俺についてこい」は通用しない

チームを率いるリーダーの資質としても、見た目の印象をコントロールするスキルは必須になってきた。チームメンバーの年齢や立場、仕事観が大きく異なる状況が珍しくなくなった今、リーダーらしさを感じ取ってもらううえで、「服装や表情、身のこなしを無視するのは難しくなってきた」。チームをまとめるにあたって、メンバーのまなざしにこたえられる身なりや所作が求められるようになっている。「黙って俺についてこい」が通用する時代ではない。

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