ヘッジファンドのカリスマが実践 成功を呼び込む原則
『PRINCIPLES(プリンシプルズ)』
徹底的にオープンになろう
ダリオ氏の「人生の教訓」は大きく分けて5つあります。
【2】人生で欲しいものを手に入れるために5ステップのプロセスを使おう
【3】徹底的にオープンになろう
【4】人の頭の配線はそれぞれものすごく違う
【5】効果的な意思決定の方法を学ぼう
この5つの大原則に対応して、さらに細かく「中原則」「小原則」と列挙されていきます。成功に至るまでの長く曲がりくねった人生を下敷きにした具体的なストーリーが、随所にちりばめられています。読者は、じっくりとそのディテールを味わいながら「良い人生を送るためのカギ」を読み取ってください。読者の理解を促すための編集者の工夫も、光ります。「人生の原則の要約と見出し」がこのパートの末尾に配置されていることです。大原則から小原則まであわせて約150が並べられているので、ここまで読んだ部分を、一覧して復習できる仕掛けです。
チーム全体で高い水準を維持する
パート3の「仕事の原則」では冒頭に「仕事の原則と要約の見出し」が列挙されます。こちらの項目はトータルで約380にもなります。一例を挙げましょう。「適切なカルチャーを得る」ことが重要だという大原則があります。この大原則は「やりがいのある仕事とかけがえのない人間関係を養う」→「どういう取り決めかはっきりとさせる」→「公平と寛大の違いを理解させよう」へとブレークダウンされていきます。
おもちゃ箱のように名言の詰まった一冊です。事典と同じで、一気に読み通す必要はないと思います。1日に5項目ごと読み進める、あるいは就寝前に数ページだけ読むというのもおすすめです。著者は比喩の使い方がうまく、読んでいて飽きないはずです。次の下りではビジネスをスポーツに例えて説明しています。
チームはプロ・スポーツのように運営すべきだ。それぞれのポジションでプレーするのにそれぞれ異なるスキルが求められる。各人が優秀でなければならない。ミッションの成功は妥協できない。期待に応えられないメンバーは外される。チームがそのような高い水準で働き、価値観を共有すれば素晴らしい人間関係が出来上がる。
(8 正しく採用しよう、誤った自在を雇うとその報いは重い 441~442ページ)
あえて心を鬼にせよ
組織運営についての著者の考え方で、特徴的なのは「物事を動かすにはシステムが重要だ」という発想です。組織をマシン(機械)ととらえます。そして、マシンを上手く機能させるためには「カルチャーと人という2つの主要部品をうまくかみ合わせることが重要だ」と続けます。
(13 問題を回避するためにマシンの改善をデザインする 529ページ)
著者は「妥協するな」ということを、繰り返し表現を変えて訴えます。「愛の鞭は素晴らしい仕事と素晴らしい人間関係を達成するのに効果的だ(331ページ)という文章がありますが、これは「あえて心を鬼にせよ」という教えです。じっくりと向き合えば、必ずやあなたの成長に影響を与えてくれる文章に巡り合える一冊だと思います。
◆編集者からの一言 日本経済新聞出版社・金東洋
「お金持ちになりたい」「成功者になりたい」「経営者になりたい」と言っている若者に1冊だけ本を渡すとしたら、間違いなく本書でしょう。『PRINCIPLES』というタイトル通り、この本には「原則」が書かれています。著者はこの原則を使って、世界最大のヘッジファンドを運用するブリッジウォーターを一代で築きあげたのです。その思想は極めて明瞭かつ明快です。本書の「5つのステップ」を着実に実行する忍耐力と実行力さえあれば、どんな人でも成功できるなと思わされます。