クールジャパンを真にクールにする ハーバードの視点
ハーバードビジネススクール教授 エリー・オフェク氏(下)

日本のポップカルチャーを紹介するイベント会場の看板 (2012年7月、パリ郊外)
世界トップクラスの経営大学院、ハーバードビジネススクール。その教材には、日本企業の事例が数多く登場する。取り上げられた企業も、グローバル企業からベンチャー企業、エンターテインメントビジネスまで幅広い。日本企業のどこが注目されているのか。作家・コンサルタントの佐藤智恵氏によるハーバードビジネススクール教授陣へのインタビューをシリーズで掲載する。今回はマーケティングの専門家、エリー・オフェク教授の3回目。日本を海外に売り込むクールジャパン戦略について聞いた。
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佐藤 日本政府は2012年から、「クールジャパン戦略」を国策として掲げ、積極的に日本の食品、アニメ、ファッションなどの文化製品を世界に売り出そうとしています。ところがメディアでは失敗プロジェクトや官民ファンドの赤字ばかりが報道され、あまりうまくいっていない印象を受けます。「クールジャパン戦略」を成功させるにはどうしたらいいでしょうか。
日本のイメージは「テクノロジー・インフラ・文化遺産」
オフェク それには私が最近書いた「場所のブランドマネジメント」(The Brand Management of Places)という教材が参考になると思います。この教材は国、地方自治体、特定の地域のブランド戦略について詳述したものです。

ハーバードビジネススクール教授 エリー・オフェク氏
観光の促進、製品やサービスの輸出、人材の獲得、外国投資の誘致など、様々な分野に影響してくるのが国のブランド力です。ブランド力を強化するにはどうしたらいいか。これは国のニーズによってやり方が違っていて、「今、世界からはこう見られているけれども、こう変えたい」という国もあれば、「全く知られていないから、もっと国の認知度を高めたい」という国もあります。
日本の国としてのブランド力は総じて高いのは事実です。様々なブランドランキングを見てみても、日本は必ずトップ5に入っています。
ところが、「日本と聞いてまず思い浮かぶもの」のトップ3にくるのは「テクノロジー」「インフラストラクチャー」「文化遺産」です。「クールでトレンディーな文化」ではありませんでした。