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これまで日本の製品といえば、「高品質」で「機能的」というのが代名詞ですが、それだけではモノが売れない時代です。これからは、さらに付加価値を加えなければなりません。

消費者は合理的な側面と感情的な側面の両方をあわせもっています。人間は必ずしも合理的な判断でモノを購入するわけではありません。日本の製品がクールだと思われたいのであれば、人間の感情にどう訴求するかをもっと考えなければなりません。日本の製品は、自動車でも、運動靴でも、ヘッドホンでも、人間の合理的な側面に訴求するようにつくられているものが多いですが、今後、さらにグローバル化を推進していくならば、もう少し感情的な側面にも目を向ける必要があると思います。目に見えない顧客のニーズにこたえる製品やサービスを提供していくことです。

佐藤 日本の食品企業の強みと課題は何だと思いますか。

日本の食品の強みは「健康に良い」

オフェク 今、世界では、健康志向が強まっています。「日本食は健康に良い」というイメージはすでに定着していますから、日本の食品企業はこの強みを最大限に生かし、マーケティングメッセージでも強調すべきでしょう。

海外進出の際の課題は流通と宣伝です。日本の食品企業同士でもう少しコラボレーションできないものでしょうか。今はそれぞれの企業が個別に現地の小売り企業にアプローチしていますが、何社か連合で交渉すれば大きなコーナーをつくることもできますし、プロモーション力も大きくなる。流通と宣伝の分野で日本企業同士がもう少し協力しあったほうが効果的ではないかと考えます。

佐藤 今、興味を持っている日本の事例はありますか。

オフェク やはり2020年の東京オリンピックです。日本がオリンピックを通じて、どのように国のブランド力を高め、誰をターゲットにどんな日本の製品やサービスを宣伝するのか、とても興味があります。特に若者への訴求は重要で、インフルエンサー、ユーチューバーなどをうまく取り込むことが鍵でしょう。

オリンピックは、食品企業にとっても世界中の人々に日本食を直接宣伝する大きなチャンスです。日本企業もアスリートに休憩中に食べているお菓子などをインスタグラムにあげてもらったり、お気に入りのお菓子をツイートしてもらったりしたらどうでしょうか。日本の食品企業がどのようにオリンピックという場を活用するのか。その宣伝戦略にも注目していきたいと思います。

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エリー・オフェク Elie Ofek
 ハーバードビジネススクール教授。専門はマーケティング。技術主導型企業および消費者志向型企業における新商品開発戦略を主に研究。マーケティングに関する教材を多数執筆し、「シャトー・マルゴー:第3のワインを売り出す」は、2019年ケースセンター賞を受賞。主な著書に「Innovation Equity: Assessing and Managing the Monetary Value of New Products and Services.」(共著、University of Chicago Press)。

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