変革に一直線 ラクスル松本氏の「志」とISAKの学び
UWC ISAKジャパン 小林りん代表理事(8)

卒業式に臨む生徒たち。培ってきた「3つの力」は、どんな変革をもたらすのか=UWC ISAK提供
変革を起こすチェンジメーカーには「問いを立てる力」「多様性を生かす力」「困難に挑む力」の3つの力が必要――。全寮制国際高校のユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)ISAKジャパン(長野県軽井沢町)は、生徒の3つの力を育む教育を実践しています。小林りん代表理事は、この力を発揮して活躍する人物として印刷・物流サービスを手がけるラクスルの創業者で社長兼最高経営責任者(CEO)の松本恭攝(やすかね)氏の名を挙げます。(前回の記事は「19歳で七大陸最高峰制覇 南谷真鈴氏はなぜ挑めたか」)
印刷業界、シェア経済で「仕組み変える」と決意
松本氏は、中小の印刷所の稼働していない時間を使ってチラシなどを安く印刷するという新しいサービスを構想し、2009年に起業。13年にサービス開始にこぎ着けた。企業を対象にシェアリングエコノミー(共有経済)を導入するという発想を事業化したのが評価され、フォーブスジャパンの「日本の起業家ランキング2018」の1位に選ばれた。18年には東証マザーズに上場し、19年8月には東証1部に指定替えされるなど、事業は拡大を続けている。

印刷業界にシェア経済を持ち込んだラクスルの松本恭攝社長兼CEO
そんな松本氏と小林氏は、若手リーダーを集めた15年のイベントで出会ったという。経済界や政界、官界、NPOなどで活躍する多くの20代~30代が参加していたが、「その場ではほとんど話せなかったので『改めてお会いしたいですね』と連絡すると、『来週末、ちょうど軽井沢でカンファレンスなんで新幹線の中で会いましょう!』と言われました」と小林氏。「新幹線の隣の席で、松本さんはマシンガンのような話しぶりでした。頭の回転の速さと社会変革にかけるマグマのような情熱の塊を感じて、衝撃的な出会いでした」と振り返る。
テレビのCMも見かけるようになり、ラクスルの名前は浸透してきた。もともとは小さな印刷所がひしめく印刷業界の効率の悪さに着目し、IT(情報技術)を使ってユーザーには廉価なサービスを、印刷所には新しいビジネスチャンスを提供するというのが起業の志だ。新卒でコンサルティング会社に勤めていた松本氏が、多くの業界の顧客に関わるなかで、最も改善の余地が大きいとみたのが印刷コストだったからだ。