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小林氏は「年によって違いますが、生徒の半分以上が米国の大学に進学します。カナダ、英国、豪州など英語圏の大学に進む生徒もいます。日本の大学に進学する生徒は1割くらいです」と話す。現在、約200人いる生徒の出身地は83カ国・地域に及ぶが、「日本の大学でも英語で卒業できる学部が増えてきているのに加え、生活費や里帰りのための航空券代などを毎年支給する日本財団の奨学金があることも大きいです」(小林氏)。

UWC ISAKジャパンの小林りん代表理事

UWC ISAKジャパンの小林りん代表理事

一方、大学進学を選ばない生徒もいる。「直ちに進学しない生徒が1割くらいいて、これはUWC ISAKの特徴だと思います。高校在学中に、本当にやりたいことがつかめなくて(卒業後に進学や就職をせず自由に過ごす)ギャップイヤーをとったり、逆にやりたいことが明確になって大学より起業の道を選んだりするのです。起業して自分には足りないものがあると知り、改めて大学に進学する卒業生もいます」(小林氏)

社会に目を向けたとき、自分に何ができるのか。どんなことに一生懸命になれるのか。UWC ISAKの授業を経験し、生徒は自分と向き合うようになるが、答えはすぐに見つかるとは限らない。小林氏は「視野が広がって、逆に進むべき道が分からなくなってしまうこともありますが、一時的に進路を見失ったとしても、構わないと思っています。40歳になって自分探しをするより、若いうちに悩んだほうがいい」と話す。

社会の変化が一段と激しくなる現在、今までのやり方の延長線上にある未来、誰かが敷いたレールの先の未来が明るいかどうか分からない。小林氏は「そういう時代の教育として、一流大学への進学だけが解ではありません。本当にやりたいことが見つかっていないなら、大学に4年の時間とお金を投じる必要は、実はないかもしれません。だから迷っている生徒には、すぐに進学しなくてもいいと指導しています」と明かす。

小林氏は「誰かが敷いたレールから1歩踏み出せば、まったく違う世界や果てしない原野が広がっているかもしれません。UWC ISAKは教育機関として、そんな原野を進む若い人たちが増えるよう願い、そこで生き抜く3つの力を鍛えるのを手伝いたい。新しいことに挑戦できる人、分野や立場、事の大小に関係なく自分の『内なる声』に突き動かされて行動を起こす若い人たちを送り出したい」と力を込める。

そのために何をするか。「10年、20年先を見据え、学校のミッション、生徒たちの声、時代が指し示す方向と照らし合わせながら、UWC ISAKにしかできないことを問い続けていきます。そういう挑戦を続けるのが、私たちの使命だと思っています」(小林氏)

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小林りん
 学校法人ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事。都内の高校からカナダのUWCに編入。1998年に東京大学経済学部を卒業した後、国際協力銀行などを経て2005年にスタンフォード大学大学院で国際教育政策学の修士課程を修了した。国連児童基金(ユニセフ)のプログラムオフィサーとしてフィリピンでストリートチルドレンの教育問題にかかわり、14年に現在の学校の前身であるインターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)を設立。UWCの加盟承認を受け、17年8月に現在の校名になった。
(おわり)

(ライター 渡部典子)

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