「仕事ができる」とは 対話で深めるビジネス力の本質
紀伊国屋書店大手町ビル店
古今東西の「仕事ができる人」にも焦点
第2章になると、ユニクロの柳井正氏、マクドナルドをV字回復させた原田泳幸氏ら「仕事ができる人」に焦点を当てながら、話が進む。戦前に阪急電鉄を発展させた小林一三や英首相のチャーチルから陸上選手の為末大氏、ロックバンドのAC/DCにまで話は飛び渡っていくが、題材の目まぐるしさと裏腹に仕事ができるとは何かがより具体的に浮かび上がってくる。3章でセンスを殺すものについて語り合い、4章ではセンスを磨くことを巡って、様々な事例をぶつけ合う。WHATを語り続ける塊の中から、何を感じ取り、どう自分の行動につなげていくかは、読者の手に委ねられる。読み手それぞれの深い思考を促してくるのが本書の味だ。
「ビジネス書としては珍しい版元の本だが、入荷してすぐ反応が出て、よく売れている」とビジネス書を担当する西山崇之さんは話す。スキルというパーツに分解できない仕事力が問われる時代という感覚が、この書店の中心顧客である大企業のミドル層の心に響いたのかもしれない。
デジタル市場の未来予測本が5位に
それでは先週のベスト5を見ていこう。
1位は、事業承継仲介ビジネスを手掛ける会社が編著者となって中小企業M&A(合併・買収)の事例や仕組みを紹介した一冊。今回紹介した「仕事ができる」について考える本が2位に入った。3位は『サピエンス全史』『ホモ・デウス』の著者の最新作。NIKKEI STYLE ブックでも「『ホモ・デウス』著者が挑む 人類を揺らす21の課題」の記事で取り上げた。人類の過去、未来を論じてきた著者が人類の現在に焦点を当てた話題の本だ。
4位はグーグルのエリック・シュミット氏、アップルのスティーブ・ジョブズ氏、アマゾンのジェフ・ベゾス氏らのエグゼクティブコーチを務めたビル・キャンベル氏の哲学やコーチング手法をまとめた本。前回の三省堂書店有楽町店のランキングにも登場した。5位は野村総合研究所ICTメディア・サービス産業コンサルティング部によるデジタル市場の未来予測本の2020年版。日本経済や世界経済の見通しよりもデジタルに特化した未来予測がランキング上位に来るのが19年の年の瀬の空気のようだ。
(水柿武志)