「数学五輪」の常連、灘の数研 先生もかなわない才能
灘中学・高校(上) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ

中3が先生になって中1を特訓する「中1講義」
(中)灘の畳が映す「柔道の父」の教え グローバル人材育む >>
数学オリンピック入賞者も多数
灘には数学研究部という部活がある。おいたちははっきりしないが、少なくとも50年以上の歴史をもつ。大学の数学科の学生が読むような、数学の教科書や専門書を読んで輪講する「自主ゼミ」が主な活動内容だ。活動は部員の自主性に任されており、顧問が指導することはほとんどない。
本年度の「自主ゼミ」グループは4つ。課題図書は、線形代数についての『理系のための線型代数の基礎』(永田雅宜)、微分幾何についての『多様体の基礎』(松本幸夫)、代数的整数論についてのオンライン文書『Algebraic Number Theory』(J.S. Milne)。もう1つのグループはいくつかの専門書を行ったり来たりしているという。
だいたい週1回、グループメンバーの都合のよい放課後に集まり、順番でまわってくる担当者が、自分の担当のページを予習して、ほかの参加者に解説する。「要するに、大学の数学科のゼミと同じことをやっています」と顧問で数学科教員の河口祐輝さんが説明してくれた。河口さんも灘の数学研究部出身で、大学は数学科に進んだ。
顧問というよりも元部員という視点で河口さんが語る。「大学数学を早くやりたいという自然な欲求がモチベーションです。鉄道研究部が鉄道を好きだったり、サッカー部がサッカーを好きだったりするのと同じように、純粋に数学に強い好奇心をもっているひとたちの集まりです」
この部活から、数学オリンピック入賞者も多数出ている。「灘の数学の先生からしてみても、『こいつにはかなわない』と思うような生徒がいるのか?」と聞いてみる。長年数学研究部を見てきたもう1人の顧問・近田宏志さんは「そりゃ、たくさんいますよ!」と大笑いした。