変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

薬学部出身の薬剤師であり企業でも研究経験が豊かだったこともあって、物事をエビデンス(裏付け)に基づいて論理的に考える意識が強い。「女性は感情のブレ幅が大きい」といった俗説に対しても「男性は怒りやすいが、女性はそうでもない。むしろ、テリトリーを守るような行動を起こしやすい。管理職に起用する場合、企業側は性別で異なる判断・行動の傾向を生かすべきだ」と説く。「女性の敵は女性」といわれるような女性同士の競合関係に関しても「互いのテリトリーをおびやかされないような人事政策・配置に心を配るほうが無用の対立を招きにくい」とアドバイスする。

野見山玲子氏

野見山玲子氏

女性管理職が周囲とぶつからずに結果を出していくうえでは「科学の成果や丁寧なロジックが効果を引き出す」と、野見山氏はサイエンス感覚のマネジメントを提案する。「女性は感情的」という思い込みに伴う不本意な扱いを避ける意味からも、エビデンスに立脚した主張や提案は色眼鏡で見られるリスクを避けやすいという。「管理職の仕事はコミュニケーションが8割」とみる。相手からの共感や納得が欠かせないだけに、数字やデータ、論理に基づいた語りかけが重要になる。自分勝手な思い込みを避ける意味からも「医学的な成果を活用した、相手に響きやすい働きかけを知っておく価値は小さくない」と説く。

第1号として自分で仕組みのデザインを

政府がスローガン的に掲げる「女性活躍」というキャッチフレーズに違和感を覚える。「とりあえず女性初の部長をつくっておけ」といった企業の実績づくり的なポーズにもウオッシング(見かけだけの態度)の疑いを抱く。「女性が企業を支えていく流れはブームではない。古い企業ではいまだに経営層に女性がいないところもあるが、そういう企業には優れた女性が入社しないので競争力が損なわれて、結果的に淘汰されてしまいかねない」と人材競争の面でのデメリットを指摘する。

ライフイベントに支障が出るという心配は、管理職昇進に女性が及び腰になりがちな理由の一つだ。とりわけ、子育ては母親がかなりの役割を担う現実がある。時間拘束がきつく、責任が重い管理職との「兼務」は「かえって勤め先に迷惑をかけてしまいかねないと、自ら身を引くケースが少なくない」(野見山氏)。しかし、近ごろはリモートワークの環境が用意されたり、周囲の理解が得やすくなったりといったプラスの変化が起きつつある。管理職にも柔軟な勤務時間を認める企業が増える傾向にある。「あらかじめ用意された環境の枠内で考えず、自分が第1号として仕組みをデザインするつもりで勤め先と話し合えば、選択肢が広がるはず」と、野見山氏は背中を押す。

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